【朗読】樅ノ木は残った 1の11 石火 山本周五郎 読み手アリア
樅ノ木は残った 1の11 石火 あらすじ
柿崎六郎兵衛は、ある密かな目的を胸に、伊達兵部宗勝の屋敷を訪ねる。彼の言葉は重く、そして鋭い――「これは一ノ関侯の御首にかかわること」。彼は、過去の陰謀と血に塗れた真実を、兵部の前にあえてさらけ出す。それは、綱宗失脚の裏で糸を引いた“ある者”の名を――遠回しに、しかし確かに突きつけるものだった。兵部と六郎兵衛、どちらもただ者ではない。剣と策、誇りと打算、冷笑と静かな怒りが交錯する。交渉は成立したかに見えたが、帰路についた六郎兵衛を、ひとりの刺客が襲う。だが、彼の技量は群を抜き、返す刃は敵を制す。「命じたのは誰か」――その問いに口を閉ざす刺客の背後から、もう一人の男が現れる。名は伊東七十郎。謎めいたその男は、嘲笑交じりに真実を告げる。黒幕は、新妻隼人――兵部の家老であり、一ノ関家の忠臣。風に柳の葉が舞う頃、物語の糸はまた新たに結ばれていく。その裏では、原田甲斐の屋敷にて、七十郎が酒をあおり、何事もなかったように笑っていた――夕映えの松林の下、血と謀の影が、静かに息を潜めていた。
樅ノ木は残った 1の11 石火 登場人物
🔹柿崎 六郎兵衛(かきざき ろくろべえ)
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浪人。元は武士。
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宮本新八を匿い、仇討ちの支援を申し出る。
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兵部宗勝に直談判しに行くほどの胆力と洞察力を持つ。
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冷静沈着で剣技にも秀でる。
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本章の主役格。
🔹伊達 兵部少輔 宗勝(だて ひょうぶのしょうゆう むねかつ)
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綱宗失脚の黒幕とされる伊達家の実力者。
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六郎兵衛の告発にも動じず、余裕を崩さない老獪な人物。
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柿崎の申し出を受け入れ、金で抱き込む。
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冷酷で理知的、野心を秘めている。
🔹只野 内膳(ただの ないぜん)
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兵部邸の用人(家臣)。
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客の取次や応対を担う。
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表面的には丁寧だが、役割に忠実すぎて人間味に欠ける印象も。
🔹新妻 隼人(にいづま はやと)
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兵部邸の家老。
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柿崎に対し門前払い同然の対応を取り、会見を渋る。
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のちに柿崎に刺客を放ったとされる(伊東七十郎の証言による)。
🔹伊東 七十郎(いとう しちじゅうろう)
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神出鬼没の謎の人物。
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兵部邸から尾行してきた刺客の名と、その背後関係を柿崎に教える。
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最後には原田甲斐邸で酒を飲みながら談笑しており、どうやら彼の配下か協力者。
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嘲笑的で皮肉屋な性格。
🔹渡辺 七兵衛(わたなべ しちべえ)
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柿崎を襲った刺客。
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覆面もせず命懸けの突きを放つが、六郎兵衛に敗れる。
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「斬れ」「言わぬ」と命令への忠誠を貫く。
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暗殺の名手と呼ばれるが、最後は七十郎に「気の毒な男」と評される。
【伊達兵部少輔 宗勝】
(権力者/黒幕)
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【新妻 隼人】 【只野 内膳】
(家老/冷徹) (用人/取次役)
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▼(命令)
【渡辺 七兵衛】
(刺客/暗殺の名手)
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▼(襲撃)
【柿崎 六郎兵衛】
(浪人/剣の達人/主人公)
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│(告発・取引)
【「綱宗逼塞の陰謀」の真相を突きつける】
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【兵部宗勝と契約】───▶(要求)
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【金銭・秘密保持・雇用】
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(別筋の動き/監視・介入)
【伊東 七十郎】
(謎の男/情報通/陽気な皮肉屋)
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【原田 甲斐】(七十郎の主?)
(静かに動くキーパーソン)
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(新八の背後にも関与)
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【宮本 新八】(未登場/裏で捕えられている)
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(六郎兵衛が手駒として確保中)