【連載朗読】花筵10 山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「花筵10」です。采女正にじき訴訟したお市はそのままその場で昏倒してしまった。人ごこちがつくまで七日あまりもかかり、皆が交代で付き添ったり見舞いに来たりした。お市は「居宅監禁」という仰付けで隣室には代官所の役人が詰め、一日おきにやはり代官所から医者が診察に来た。このあいだに修理していた機場が出来、藩の補助で機も新しく六台入った。このうち四台はお市のために用意されたもので、若い娘を三人お市に付ける目的で雇ったということであった。また、体の具合がよくなって機へ座れるようになったら、大垣から家中の娘たちが習いにくるということであった。そしてそのころ、采女正も病臥して重態であった。これはお市にとって新しい不安だった。お市は代官所から十数人の役人が来て敬語するようになり、美濃甚ぜんたいの警護をする風だった。九月になって間もなく大垣から「貞二郎つきそいのうえ出頭するように」という使者が来た。