【連載朗読】花筵(はなむしろ)山本周五郎 読み手アリア
こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「花筵」です。この作品は昭和23年、労働文化社から刊行されました。裕福で厳格な武家で育ったお市は、五人兄弟の末の女子で必要以上に大切に育てられていたが、陸田家(くがた)へ嫁に来てから、実家にいた時には育ち切らなかったものが成長を始めたという感じで、体も心も伸び伸びと息づき始めたように思っていた。陸田(くがた)には良人の信蔵、姑の磯女、義弟にあたる辰弥と久之助がいるが、いったいが暢気で淡白な性質で、めったに物事にこだわるということがなかった。お市にとっては嫁してきてからは、世間の例とは逆な、まるで解放されたような安らぎを感じていたのだった。そんなある日、実家の奥村から使いがあり、母が病気で寝ているから顔を見せて貰いたいと云ってきた。お市は磯女の許しを得てすぐ行くことにした。
花筵(はなむしろ)主な登場人物
お市・・・陸田信蔵の妻。
陸田信蔵・・・大垣藩の勘定方元締役。口数が少なく物静かで、眼に見えないところに注意のゆき届く。
陸田辰弥・・・二十四歳。部屋住。躰も顔もまるまると肥え、どっしりと落ち着いて微笑を浮かべている。
陸田久之助・・・二十二歳。御蔵方へ勤める。口がよく回り、することが機敏で兄弟の中でいちばん甲斐性者と云われている。お市が嫁してきて始めに馴染んだ。
磯女・・・信蔵の母。
花筵(はなむしろ) 覚え書き
いったい・・・もともと。
総体(そうたい)・・・総じて、大体。
笹巻なにがし・・・人や物の名前がはっきりしない時や、ぼかしたりするときに使われる。
禅の公案・・・悟りを得るために課す課題。
なかんずく・・・とりわけ、特に。
泰然自若(たいぜんじじゃく)・・・落ち着ていて物事に動じないさま。
星宿譜(せいしゅくふ)・・・星座の一覧表。
二十八宿・・・天球を一周する二十八の星座。
気はしのきく・・・よく気の付く。
豪宕(ごうとう)・・・大胆で細部にこだわらないさま。
干割れ(ひわれ)・・・日光などの当たったために木材などに割れ目が入っていること。
栴檀(せんだん)・・・白檀。
玳瑁(たいまい)・・・海亀。べっ甲。
暗合(あんごう)・・・偶然に一致すること。
しかみ・・・額などに皺が寄ること。