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目次

しじみ河岸 山本周五郎

【朗読】しじみ河岸 山本周五郎 読み手アリア

癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「しじみ河岸」です。この作品は昭和29年51歳の作品です。夫婦約束をした宇之吉を「無理なことをいったから殺した」と自首したお絹の自白は、まるで自分から罪を衣ようとしているようだった。新参の吟味与力、花房律之助は彼女が犯人ではないと確信し、再吟味することを決意します。しかしお絹は自分が犯人であると主張し、長屋の住民たちも口を閉ざす中、捜査は難航します。金持ちに利用される貧しい人たち、最後に明かされる、なぜ新参にもかかわらず律之助が再吟味する気になったのか、お絹の生い立ちなど胸を打たれる作品です。

しじみ河岸 主な登場人物

花房律之助・・・24歳。町奉行所南の新参で吟味与力に任ぜられたばかり。町奉行所に勤める気はなかったが、父の遺言を聞いて急に決心し、母の反対を押し切って勤めに出た。

髙木新左衛門・・・29歳。早くから南に勤めている。律之助の従兄。吟味与力として敏腕をふるっている。

お絹・・・二十歳。恋人の卯之吉を殺したと云って自主してきた。寝たきりの父と、白痴の弟がいる。

卯之吉・・・二十五歳。左官職。刃物で刺されて死ぬ。

直次郎・・・お絹の弟

源兵衛・・・差配

 

 

しゅるしゅる 山本周五郎

【朗読】しゅるしゅる 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「しゅるしゅる」です。昭和30年武家もの・滑稽物です。設定が「椿説女嫌い」(昭和23年)に似ています。椿説は女子に超絶モテるタイプでしたが、しゅるしゅるは親が次々と娘を見せにくるいわば嫁入りに条件のいいタイプです。周五郎の作品によく出てくる「ちょっとぼんやりして気がつかない」ところもあります。

しゅるしゅる 主な登場人物

由良万之助・・・拝命してまだ半年そこそこの若き城代家老。老女尾上の教授法が厳しいので注意してもらいたいと頼まれる。

尾上(おのえ・あきつ)・・・御殿の作法を京都風に改めるため江戸から赴任してきた作法教授の老女。

片桐五左衛門・妻女・松江・・・次席家老。妻女は松江を万之助の嫁にと売り込んでくる。松枝は尾上に口の端をつねられ、またお尻をぶたれる。

樫田広之進・妻女・小園・・・小園を万之助の嫁にと売り込んでくる。小園は尾上に鞭で手の平を打たれる。

しゅるしゅるのあらすじ (※ネタバレを含みます)

この話は、旧藩主で代々家老だったという子孫の家が倒産した時に、若い友人の一人が、その家の古文書の中から見つけた備忘録だか回想録か、または誰かの聞き書きを、仮名にし、経過に多少の変更を加えたものである。

若き城代家老・由良万之助は、幾度も同じ不平を聞いている。江戸から赴任してきた老女・尾上の作法教授法が厳しく、相当な家柄の娘たちを折檻するため、万之助に注意してくれるようにと云うのだ。万之助は気が進まなかった。翌々日、下城すると樫田広之進の妻女とその娘・小園が訪ねてきた。尾上女史の教授法の不平と、小園を売り込みにきたのだ。万之助の父が半年前に亡くなって以来、娘を同伴した客がしきりに訪ねてくる。どの娘もきらびやかに盛装していて、かくべつ要件があるわけではない。色々と機会を設けてその娘たちを彼に認めさせ、あわよくば娶らせようと心を配っているようだった。明くる朝、厳元寺で接心が終わった日の午後、下城すると次席家老の片桐に万之助が呼んでいると云われて尾上女史が訪ねてきていた。

アリア
男女の差別を認めない尾上に万之助は断乎として男女の差別をはっきりと認めさせると誓います。
かん太
ところで「しゅるしゅる」って何かな?お話しの最後にでてきますよー「しゅるしゅる」と「にゅるにゅる」
アリア
登場した植物は桔梗の花でした。

しゅるしゅる 覚え書き

寡聞(かぶん)・・・見聞が狭く浅いこと。謙遜していうときの語。

卒爾(そつじ)・・・にわかなこと。また、そのさま。だしぬけ。突然。

接心(せっしん)・・・禅門で一定の期間、座禅をすること。

公案(こうあん)・・・禅宗で参禅者に考える対象や手がかりにさせるために示す、祖師の言葉・行動。

嬌羞(きょうしゅう)・・・女性のなまめかしい恥じらい。

打座(たざ)・・・座ること。座禅を組むこと。

如意(にょい)・・・僧が読経・説法のときに持つ僧具の一。孫の手のような形状。

榻(とう)・・・細長い床几(しょうぎ)、こしかけ、また、ねだい。

退下(たいげ)・・・退去すること。御前をさがること。

如意(にょい)・・・僧が読経・説法のときに持つ僧具の一。孫の手のような形状。

即物的(そくぶつてき)・・・主観を排して、実際の事物に即して考えたり、行ったりするさま。

虚をつかれる(きょ)・・・油断していて隙をつかれる。

急湍(きゅうたん)・・・流れのはやい浅瀬。

善後処置(ぜんごしょち)・・・事件が起こって、その後に残った問題をきっちりと処置すること。

尿・立尿(にょう・たちいばり)

拘泥(こうでい)・・・こだわること。必要以上に気にすること。

野狐(やこ)

鉄の草鞋(かねのわらじ)

 

 

 

 

 

 

 

その木戸を通って 山本周五郎 

【朗読】その木戸を通って 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「この木戸を通って」(昭和34年)です。この作品は、TVドラマ化、映画化された人気作品です。ある日、平松正四郎の屋敷へ記憶を失った見知らぬ女が訪ねてき、正四郎の屋敷に住むようになります。平四郎と彼女はやがて夫婦になり、彼女はまた去っていくという不思議な話です。記憶を辿るのに「木戸」が何度も出てきますが、その木戸の向こうに何があるんだろう。想像が膨らみます。

その木戸を通って 主な登場人物

平松正四郎・・・二十五歳まで部屋住みだったが、廃家になっていた平松家を再興させるため当主に選ばれる。勘定監査役。

ふさ・・・記憶を失った十七、八の女。平松正四郎さまにお会いしたいと突然屋敷に訪ねてくる。

田原権右衛門・・・中老筆頭。正四郎の父、勘解由と親しいため、父の依頼で監督者のような立場になる。

吉塚助十郎・むら・・・平松家の家扶とその妻。

岩井勘解由・・・正四郎の父。信濃守景之の側用人。

加島ともえ・・・城代家老の娘。正四郎の許嫁者。

その木戸を通ってのあらすじ(※ネタバレを含みます)

平松正四郎は三日前から勘定監査で城中に詰め切っていた。そこへ中老筆頭の田原権右衛門から呼び出しがあった。正四郎の家に見知らぬ娘がいるというのだ。城代家老の娘で許嫁のともえが訪ねて行ったとき、見知らぬ若い娘を見かけ、家扶に問いただしても当惑しすぐに答えられなかった。「縁談がとりやめになるかもしれない」平四郎は監査が終わるとまっすぐに家に帰った。許嫁のともえは城代の娘でもあるし、平四郎はともえをたいそう気に入っていた。家に帰ると確かに見知らぬ娘がいた。その娘は一切の記憶がなく、ただ「平松正四郎さまにお会いしたい。」と訪ねてきたという。平四郎はその娘に会ったが互いに見覚えがなかった。城代家老の娘との縁組を邪魔する誰かのいたずらか罠かもしれない・・・。平四郎は娘を追い出すことにした。雨の降る中を娘の後をつけ、どいつの仕業がつきとめようとしたが、娘は頼るものもなく夕闇の辻堂の中で途方に暮れて泣いていた。平四郎は娘を連れ帰り、その日から平四郎の屋敷で暮らすことになった。

かん太
ふさは一体どこへ行ってしまったんだろう・・・

その木戸を通って 覚え書き

語調(ごちょう)・・・話すときの言葉の調子。言葉つき。

蘊蓄(うんちく)・・・蓄えた深い学問や知識。

かぎ裂き・・・布や衣服がくぎなどに引っかかってかぎ型に裂けること。また、その裂けきず。

二刻(ふたとき)・・・現在の時間で約4時間。

お門ちがい(おかどちがい)・・・目当てを間違えること。見当ちがい。

聖人君子(せいじんくんし)・・・立派な人徳やすぐれた知識、教養を身に着けた理想的な人物。

間拍子(まびょうし)・・・物事の行きがかり。その時のはずみ。

尻端折(しりばしょり)・・・(新潮文庫の読み仮名はしりつぱしよりでした。)着物の裾を帯の後ろに挟んでとめる。

鐺下がり(こじりさがり)

脚絆(きゃはん)・・・旅行・作業などの時に、すねに着けて足ごしらえとした紺木綿などの布。

かどわかす・・・人をだまし、または力ずくで他へ連れ去る。誘拐する。

賢しげ(さかしげ)・・・いかにも利口そうなさま。

路傍(ろぼう)・・・みちばた。道のほとり。

手蹟(しゅせき)・・・文字の書きぶり。筆跡。

大身(たいしん)・・・身分が高いこと。位が高く禄が多いこと。

追従(ついしょう)・・・他人の気に入るような言動をすること。こびへつらうこと。

面変わり(おもがわり)・・・顔つきが変わること。

 

 

 

 

ちゃん 山本周五郎

【朗読】ちゃん 山本周五郎

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「ちゃん」です。この作品は、昭和33年週刊朝日別冊特別号に掲載されました。

ちゃん 主な登場人物

重吉・・・火鉢を作る職人。時代遅れな火鉢を作るがまったく売れない。酒浸りの生活を送っている。

お直・・・重吉の女房。

 

つゆのひぬま 山本周五郎

【朗読】つゆのひぬま 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「つゆのひぬま」です。この作品は昭和31年オール読物に掲載されました。つゆのひぬまって朝露が乾かないほどの短い間のことを云います。ほんの一時の間の愛で傷ついた経験のあるおひろと、今まさに自分の真実の愛を実らせようとするおぶんの話です。おひろがおぶんに「どんなに真実想いあう中でも、きれいで楽しいのはほんの僅かな間よ。露の干ぬまの朝顔、ほんのいっときのことなのよ。」と諭すのですが最後に真実の愛をみつけたおぶんに囁く祝福の言葉が心に残りました。しかし良助の生い立ちは壮絶でした。

なんの花か薫る 山本周五郎

【朗読】なんの花か薫る 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「なんの花か薫る」(昭和31年)岡場所ものです。若い侍が泥酔して人を斬って追われ、お新のところへ飛び込んできます。お新は彼を危ないところから助け、それから若侍はお新のところへ通ってくるようになります。「客に惚れるな。」と口癖のように云ってた菊次姐さんが「あの人あんたに夢中よ。」「あんたをお嫁さんにもらうんですって。」と云ってから段々少しづつお新もその気になっていきます。話が進むにつれて「もしかしたら・・・いえそんなことあるわけないじゃないの・・・でもひょっとして・・。」と読んでいる私たちも主人公お新と共にハラハラドキドキしていきます。(大炊介始末/新潮文庫)

かん太
菊次姐さん、「あの人あんたに夢中よ。」なんてそんなこと言っちゃダメですよー!と叫びたくなりました。そして、ある出来事をきっかけに半信半疑だったお新の気持ちが一気に燃え上がるんだよ!嗚呼・・!
アリア
房之介は三日に一度きちんと訪ねてくるんだ。店が暇な時は、お新の部屋にみんなを呼んで茶菓子を買ったり、てんや物をとったりして誰とでも話した。しかし彼は決して泊まらないし、お新の躰にも触れなかったんだ。
かん太
お新は、房之介がまだ女を知らないとわかったとたんから、にわかに彼が遠くなるように感じるんだ。ぐんぐん遠くはるかに遠くなるように。そして暗い不安な感じにおそわれるんだ。
アリア
房之介と岡場所の女たちの温度差がよく描かれています。だからといって安易に「嫁にもらう。」などと云うのはねぇ。

なんの花か薫る 主な登場人物

お新・・・岡場所の女、十八歳。やくざな父とおとなしいだけの母、病身の妹のために生活に困り、十六で身を売った。しかし丑の年の大火で家族は死んだ。

江口房之介・・・二十二歳。藤堂和泉守の家中で江口家の一人息子。初心なおぼっちゃん。細い躰つきで背丈もあまり高くない。泥酔して喧嘩騒ぎを起こし、鳶の者を二人斬って勘当され、叔父の家に預けられている。喧嘩騒ぎの時に岡場所へ逃げ込んで、お新に助けられる。

菊次・・・岡場所で一番年嵩の二十八歳。十四で身を売られてからずっと男で苦労した。いつもつまらない男に引っ掛かり、裸になるまで貢いだ。しっかりした性分で、ここで唯一読み書きができ、芸事も縫針もできる。「客に惚れるな。」が口癖。店がひまで、皆にせがまれると曽我物語を読んでやる。自分の葬式代だけたまればよいといってあくせくしない。

おみの・・・岡場所の主婦。菊次と前からの友達で新吉原の小格子でいっしょだった。

みどり・・・岡場所の女。十九歳。男が好きだからこのしょうばいにはいったといばっている。あのことに人と違った癖がある。

吉野・・・岡場所の女。二十歳。里にやってある子供がいる。

千弥・・・岡場所の女。二十歳。母親とぐれた兄を背負っている。正月近くにくら替えをする。

おせき・・・岡場所の女。二十二歳。千弥と入れ替わりに入った。器量も悪くないし、底抜けに人がいい。

何の花か薫る 覚え書き

とっつき・・・いちばん手前。

年嵩(としかさ)・・・年齢がほかの人より多いこと。

尋常(じんじょう)・・・特別でなく、普通であること。

地回り(じまわり)・・・やくざ

いい面の皮(いいつらのかわ)・・・割に合わないことに出会ったときに、自嘲したり、同情したりしていう語。

大身(たいしん)・・・身分が高いこと。位が高く禄の多いこと。

痴話喧嘩(ちわげんか)・・・痴話からおこるたわいない喧嘩。

不首尾(ふしゅび)・・・最後がうまくいかないこと。また、そのさま。

内祝言(ないしゅうげん)・・・内々に祝言すること。

 

 

はたし状 山本周五郎

【朗読】はたし状 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「はたし状」(昭和26年)です。今泉第二は、藩主の参勤の供に加わって初めて江戸にゆくことになった時、出立前に従兄妹のしのと婚約した。江戸へ着いたのが三月、それから僅かに半年と経たない九月に、しのとの婚約が一方的に破棄されたと父が手紙で知らせてきた。(四日のあやめ/新潮文庫)

はたし状 山本周五郎  主な登場人物

今泉第二・・・二十七歳 ひとりっ子で気が弱く、甘やかされて育つ。英之助を保護者のように兄事していた。二十四の時、江戸に参勤の供で出た間に、婚約者しのから一方的に婚約を破棄された上、親友の藤島英之助としのが結婚したことを知り、人間不信に陥る。昌平黌で史学を学び、三百石の寄合番頭、御文庫の蔵書の整理と補充調査を行う。

藤島英之助・・・第二と同じ年。六歳の時に藩の学堂で机を並べて以来の親友。三人兄弟の長男で、はやくから沈着で意志は強く、考え深く落ち着いていて、いつも言葉少なで動作も静かだった。学問も武芸もずば抜けていた。先手組支配。

しの・・・和田家の四人兄妹の長女。開放的な家風で彼らの友達が賑やかに出入りする家庭で育つ。第二と婚約するが、一年も経たぬうちに一方的に婚約を破棄し、英之助に嫁いる。

八木千久馬・・・しのと従兄妹関係で、幼い頃、和田でよく遊んだ。

 

 

 

ひとでなし 山本周五郎

【朗読】ひとでなし 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「ひとでなし」です。(昭和33年)石川島の寄場から牢ぬけをして、死んだと見せかけた痩せた男・力造とその相棒の大きい男・吉次のたくらみ。力造は妻おようを自分たちが江戸から上方へ抜け出す際に利用しようとしていた。何も知らないおようは、力造は牢ぬけをして死んだと思っていた。そして、そんな彼女を支え続ける幼なじみの津の正の旦那・康二郎。二人はあさって結婚することになっていた。(あんちゃん/新潮文庫)凶状持ち二人の男の場面と、おようと康二郎の場面が分かれていて、悪だくみをする力造とおようの心理が代わる代わる出てきます。最後は意外な結末で飽きさせない面白い話でした。

ひとでなし 主な登場人物

力造・・・痩せた小さい男。餝屋で子飼いからの職人でそこの一人娘のおようと結婚したが、博打と女で店を潰し、とうとう石川島の寄場へ 送られる。しかし相棒と共に牢抜けをし、三年間悪いことをしつくして江戸にいられなくなり、上方へずらかろうとしている。

吉次・・・大きい方の男。自分と力造の逃亡のためにおようを連れに行くが、そこでおようと康次郎の話しをすっかり聞いてしまい・・・

およう・・・餝屋の一人娘で父親の決めた力造と結婚して大変な苦労をする。五年前から康次郎の世話で店を出し繁盛した。夫は牢抜けをして死に康次郎と結婚する予定。

康次郎・・・袋もの屋、津の正の主人。おようを助け、妻が病んで死んだ後にもらおうとしている。ずっとおようが好きだった。

ひとでなし 覚え書き

水面(みのも)・・・水の水面

柔和(にゅうわ)・・・性質や態度が、ものやわらかであること。また、そのさま。

目顔(めがお)・・・人を見る目に託した表情。

くわばらくわばら(桑原桑原)・・・災難や禍事などが自分の身にふりかからないようにと唱える、まじない。

廃寺(はいじ)・・・住僧もなく荒れ果てた寺。

麻裏(あさうら)・・・麻裏草履の略。草履の裏に、麻糸を平たく編んだ紐をとじつけたもの。

寄場(よせば)・・・人足寄場の略。江戸幕府が設置した浮浪人収容所。更生施設。

物見遊山(ものみゆさん)・・・物見と遊山。気晴らしに見物や遊びに行くこと。

真綿でくるむように・・・大事にしすぎて過保護気味に育てられたという意味。

お仕着せ(おせきせ)・・・上方から一方的に与えられること。また、そのようにして与えられたもの。

機先(きさき)・・・前兆。前触れ。

榨木(しめぎ)・・・物を強く締め付ける道具。菜種など油を搾りとる道具。

 

ひやめし物語 山本周五郎

【朗読】ひやめし物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「ひやめし物語」です。この作品は昭和22年、講談雑誌に掲載されました。柴山大四郎は柴山家の四男坊、部屋住みの二十六歳である。思わしい養子の話もなく、縁がなければ一生冷飯で終わるより仕方がありません。柴山家の家族は大四郎に限らず暢気者で、「そのうちなんとかなるさ」くらいのごく軽い気持ちでなりゆきにまかせています。大四郎は古本あさりをするのが道楽だった。その途上、彼はある佳人をみそめてから自分のいぶせき運命に気付くときが来たのでした。

かん太
部屋住の冷飯ものは面白い。「ひやめし物語」は最後がスカッとするサクセスストーリーなんだ。そして、家族みんなが暢気者だからほっこりだよ。

ひやめし物語 主な登場人物

柴山大四郎・・・二十六歳、四男で部屋住み。暢気で素直な性格。月々の小遣いで古本を購い、傷んだところを丹念に直して自分の蔵書印を押すのが喜びだった。ある日、古本あさりの途中で佳人を見初める。

柴山又左衛門・・・長兄。定番、亡くなった父の跡を継いでいる。

柴山粂之助・・・家禄三百石のうち五十石貰って分家している。

柴山又三郎・・・三兄、中村へ養子に行った。中村は新番組で百九十石で羽振りがいい。口が達者で四人分を一人で引き受けたようにしゃべる。

椙女・・・母親

中川八郎兵衛・・・藩の中老で五千石の扶持。大四郎を気に入る。

平松吉之助・・・大四郎と藩校で机を並べたことのある友人。奥小姓で正経文庫に勤めている。

ぬひ・・・大四郎を想う。

ひやめし物語 覚え書き

いぶせき・・・心が晴々しないうっとおしいさま。

購う(あがなう)・・・買い求める。

書肆(しょし)・・・出版したり売ったりする店。

奇覯(きこう)・・・非常に珍しいこと。

史書(ししょ)・・・歴史を記した書物。

珍重(ちんちょう)・・・珍しい物として大切にすること。

題簽(だいせん)・・・書籍の表紙に題名などを記して貼る細長い紙。

艶聞(えんぶん)・・・男女間の艶っぽいうわさ。

揶揄(やゆ)・・・からかうこと。なぶること。

邂逅(かいこう)・・・思いがけなく出会うこと。

気鬱(きうつ)・・・気分がはればれしないこと。

独酌(どくしゃく)・・・ひとりで酒を注いで飲むこと。

古渡り(こわたり)・・・室町時代またはそれ以前に渡来したこと。

 

 

 

 

 

みずぐるま 山本周五郎

【朗読】みずぐるま 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「みずぐるま」(昭和29年)です。「岩本新之丞一座」の掛け小屋の興行で、美若太夫は「みずぐるま落下落とし」という芸を行っていた。赤樫の稽古薙刀を持ち、三人の男が続けざまに紅白の毬を投げるのを見事に打ち返す技は、ちょっと水際立ったものであった。(おさん/新潮文庫)

みずぐるま 主な登場人物

美若大夫(若尾)・・・孤児として孫右衛門に育てられる。岩本新之丞一座で薙刀を巧みに使った「みずぐるま落花返し」の芸をするところを和次郎に見いだされ、弘田家の養女になる。

弘田和次郎・・・弘田家は、六百五十石の老職で、国許の交代次席家老。十八歳で家督を継ぐが、現在は無役。

谷口修理・・・三百石の中老の子。和次郎の母方の従兄妹。和次郎の二歳年上。

弘田平右衛門・豊・・・和次郎の父母。

深江・・・和次郎の姉。

磯野萬・・・若尾の薙刀の師匠。

河内伊十郎・・・若尾の父親、浪人。病気で寝つき、岩本新之丞一座の孫右衛門に若尾を託して死ぬ。

岩本新之丞(孫右衛門)・・・座頭。 久助(つづら番) 小菊太夫(芸犬使い) 権之丞(綱渡り) 仙之丞(丹前舞) 操太夫(手品使い)常盤(曲芸)

みずぐるま 覚え書き

掛け小屋(かけごや)・・・臨時にこしらえた興行用の小屋。

水際立つ(みずぎわたつ)・・・とくにすぐれていて、はっきりと目立つ。

はばかり・・・便所。

本筋(ほんすじ)・・・本来の血統や流派。

束脩(そくしゅう)・・・入門するときに持参する謝礼。

位地(いち)・・・くらい。地位。

出精(しゅっせい)・・・精を出して努めること。

規定(きてい)・・・すでに決まっていること。

繁華(はんか)・・・人が多く集まり、にぎわっていること。また、そのさま。

明和九年の大火・・・江戸三大大火のひとつといわれる。強風にあおられ三日間にわたり江戸市中に類焼した。

灰燼(かいじん)・・・灰や燃え殻。建物などが燃えて跡形もないことをいう。

築山(つきやま)・・・庭園などに、石や土を盛ってつくった小山。

軽侮(けいぶ)・・・軽んじ、あなどること。人を見下してばかにすること。

究竟(くっきょう)・・・物事をきわめた最高のところ。

醜聞(しゅうぶん)・・・その人の名誉や人格を傷つけるような、よくないうわさ。

蛙の子は蛙・・・子は親のたどった道を歩むものだ、また凡人の子は凡人にしかなれないものだの意。

かん太
(ネタバレよ!)彼が迎えに来てくれた時、若尾は、「彼がこんなにも自分を大事に思ってくれること。」「彼と一緒にいる以上、もはや何も怖れるものはない。」という大きな安堵感とよろこびと幸福に包まれる場面がとても好きです。もちろん最後の場面も!