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裏の木戸はあいている 山本周五郎 

【朗読】裏の木戸はあいている 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「裏の木戸はあいている」(昭和30年)です。高林の家の裏木戸の内側に金の入っている箱が掛けてあり、窮迫している者は誰でもはいって箱の中から必要なだけ持って行き、返せるときが来たら返せばよかった。この無償で借りることができるお金が入った箱をめぐる話です。

裏の木戸はあいている 主な登場人物

高林喜兵衛・・・家に出入りの吉兵衛一家に起こった出来事から「裏の木戸」のことを思いつく。

和生久之助(にぎゅうきゅうのすけ)・・・重職の家柄で、寄合肝煎を勤める。喜兵衛と少年時代から誰より親しくつきあっている。

藤井十四郎・・・喜兵衛の義兄、放蕩者で喜兵衛以外の家族は匙を投げている存在。

裏の木戸はあいているのあらすじ (※ネタバレを含みます)

高林の裏木戸の内側の箱の金は貧窮したものが、顔も見られず、証文や利息なしに必要なだけ金を持って行き、返せるときが来たら返せばよいし、返せなければ返さなくともよいので、貧窮した人たちはその「裏木戸の箱」をたのみにしていた。喜兵衛はただその箱を調べて、金があればよし、無くなっていれば金を補給していた。彼はその箱を家督相続してからずっと続けていた。喜兵衛は幼い頃、出入りの職人一家が、わずかな金に困って全員死んでしまった、という経験をする。その時、周りの大人たちは口先だけで何もしなかった。自分は何かできることをしようと思い、それがきっかけで「裏の木戸の箱」を始めたのだ。

かん太
今回の植物は神明社の境内の杉林と、鳥居をくぐった右手の杉だよ。最後に雨でなく雪が降っていました。

裏の木戸はあいている 覚え書き

酒色(しゅしょく)・・・飲酒と色事。

放逐(ほうちく)・・・その場所や組織から追い払うこと。

柔和(にゅうわ)・・・性質や態度が、ものやわらかであること。また、そのさま。

薬礼(やくれい)・・・治療や投薬に対して、石に払う代金。くすりだい。

饐える(すえる)・・・飲食物が腐って酸っぱくなる。

雑用(ぞうよう)・・・こまごましたものの費用、雑費。

窮迫(きゅうはく)・・・行き詰まってどうにもならなくなること。

小人(しょうじん)・・・武家で、雑役に従った身分の低い人。

凌ぎ(しのぎ)・・・苦しい局面や辛いことを、なんとか持ちこたえて切り抜けること。

下人(げにん)・・・身分の低い者。

害悪(がいあく)・・・他に災いを与えるような、よくない事。

救恤(きゅうじゅつ)・・・困っている人に見まいの金品を与えて救うこと。

 

 

 

 

西品寺鮪介(にしほんじ しびすけ) 山本周五郎

【朗読】西品寺鮪介(にしほんじ しびすけ) 山本周五郎 読み手アリア

西品寺鮪介   山本周五郎 あらすじ

鳥取藩士・佐分利猪十郎は、村を通りかかった際に奇妙な若者・鮪介(しびすけ)に出会う。彼は地面に立てた一本の針を真っ二つに斬ることに執念を燃やし、三年間修行を続けていた。しかし、いくら挑戦しても針は斬れない。許嫁のお民は祝言を望むが、鮪介は「針を割るまで」と誓いを立て、彼女を待たせ続けていた。

その剣技を見込まれた鮪介は、猪十郎により城下へ招かれ、武士たちと試合をすることに。まるで神がかった剣速で次々と相手を倒し、鳥取藩主・池田光政に認められ士分に取り立てられる。しかし、家中では「馬鹿天狗」と嘲笑され、針割りに執着する姿は奇異の目で見られるようになる。

ある日、町で侍に理不尽な仕打ちを受ける商人を助けようとした鮪介は、殴られ、「分際を知れ」と罵倒される。その言葉に突き動かされ、彼は家へ駆け戻り、改めて針割りに挑戦する。すると――ついに、針が真っ二つに斬れた。執念こそが己を縛っていたのだと悟った鮪介は・・・・。続きは是非動画をご視聴ください。

西品寺鮪介 山本周五郎 主な登場人物

西品寺 鮪介(しびすけ)

西品治村の百姓の次男。剣の極意を求め、地面に突き立てた一本の針を真っ二つに斬る修行を三年間続ける。偶然見込まれて武士となるが、「分際を知れ」という言葉をきっかけに悟りを開き、百姓として生きる道を選ぶ。

お民(たみ)

鮪介の許嫁。百姓・長左衛門の娘。鮪介の剣術狂いに苦しみながらも、彼を信じて待ち続ける。母の死を前に祝言を願うが、一度決めた誓いを貫く鮪介に理解を示し、最後まで支え続ける。

佐分利 猪十郎(さぶり いじゅうろう)

鳥取藩士。釣りの帰りに鮪介の「針割り修行」を目撃し、その才能を見抜く。彼を城下へ招き、武士として取り立てるが、最終的に彼が百姓へ戻ることを見届ける。

池田 光政(いけだ みつまさ)

鳥取藩主。鮪介の非凡な剣技に興味を持ち、士分に取り立てる。しかし、彼の本質を見抜いており、試合を禁じることで内省を促す。後に農夫として成功した鮪介を称賛し、「一人の百姓は百人の武士よりも尊い」と評する。

戸田 市郎太(とだ いちろうた)

鳥取藩士。鮪介の剣技を見て、その異様さに気づき、猪十郎と共に城中へ報告する。

長左衛門(ちょうざえもん)

お民の父。初めは鮪介の剣術狂いに反対し、婚約の解消を申し出るが、最後は彼を受け入れ、婿として迎える。

沢平(さわへい)・六助(ろくすけ)

鮪介の父と兄。剣術にのめり込む鮪介に呆れながらも、見守っている。

吉原 不倒斎(よしわら ふとうさい)

城下に住む偽の剣術指南役。本当は剣術の心得がないが、大坂の陣で聞きかじった知識をもとに道場を開いている。彼の「昔、弓術者が針を射抜いて極意を得た」という作り話が、鮪介の針割り修行の発端となる。

桑島 八十八(くわじま やそはち)

鳥取藩の武士。家中で剛勇と評されるが、鮪介との試合で即死する。

岡田 甚五兵衛(おかだ じんごべえ)

城内の審判役。鮪介の異常な剣技を目の当たりにし、驚愕する。

土器売の商人

城下で侍に絡まれ、暴力を受ける。彼を助けようとした鮪介は侍に殴られ、「分際を知れ」と罵倒される。この言葉が、鮪介の悟りへとつながる。

備忘録

本当の強さとは、執着を捨て、自分の生きるべき道を見極めることなのですね。どれほど努力しても割れなかった針は、剣を捨てたその時、真っ二つに斬れた。強さとは力ではなく、何を手放し、何を選ぶかにあります。武士ではなく百姓として生きることを決めた鮪介は、剣よりも尊い「土を耕し、人を生かす力」を手に入れた。池田光政の「一人の百姓は百人の武士よりも尊い」という言葉が示すように、大切なのは地位や技ではなく、自分の役割を見極め、全うすることなのだーー!!

討九郎馳走 山本周五郎

【朗読】討九郎馳走 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「討九郎馳走」です。この作品は、昭和17年37歳の作品です。武家もの、岡崎もので幕府や大名家の複雑な関係や政治的な緊張などが描かれています。

討九郎馳走 主な登場人物

兼高討九郎・・・26歳、徒士組の支配をしている五百石の番頭。武骨物で礼儀作法に疎く、野戦演習に情熱を注いでいる。

水野主馬・・・老職であり、討九郎に馳走番を命じる。厳格な性格で、討九郎の辞退を許さない。

水野忠善・・・岡崎城主で討九郎の主君。41歳で、精悍な風貌をしている。討九郎に馳走番を命じた張本人。

拝郷源左衛門・・・家老の一人。討九郎に馳走番を一時的に交代するように提案する。

大納言義直・・・尾張の大名で、討九郎の接待を受ける。水野忠善とはかねてより反目の間柄。

討九郎馳走 あらすじ

兼高討九郎は、勇猛果敢な武士であり、徒士組の指揮官として野戦訓練に情熱を注いでいた。彼の生き方は武骨で、礼儀作法に疎い。しかしその彼に馳走番という接待役が命じられた。彼はこの役目に戸惑い、何度も辞退を申し出る。自分がこの役にふさわしくないことを強く感じていたのだ。しかし主君、水野忠善はその辞退を許さず、彼を厳しく叱責するのであった。彼は仕方なく馳走番を引き受けるが、その職務に対して心から尽力することはできなかった。日々の勤めが続く中でも、彼の心は戦場での訓練に焦がれていた。そんな折、尾張の大名が城に宿泊することになり、彼の接待に不安を感じた老職たちは討九郎に一時的に役目の交代を提案するのだった。

討九郎馳走 アリアの感想と備忘録

兼高討九郎が馳走番の役を仰せつかって辞退を申し出る場面に彼の率直で誠実な性格が表れており、武士としての誇りと責任感を感じました。仰せつかった役はとりあえず受けるのものですが、自分の限界を正直に認める討九郎の率直な姿勢に彼の魅力が出ている思いました。でも結局は馳走番となるのですが、日々の勤めの中で、与えられた役割に対して本当の意味で自分を捧げることができない苦悩が伝わってきます。しかし、老職たちが彼に馳走番を一時交代するように提案する場面では討九郎の誇りと責任感が再び試されます。彼がその提案を拒否し、自らの役目を全うする決意を固めた時、まさに武士としての覚悟と誇りを感じて胸を打たれました!

誉れの競べ矢 山本周五郎 

【朗読】誉れの競べ矢 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「誉れの競べ矢」です。この作品は昭和10年、周五郎32歳の時、少女倶楽部に掲載された武家もの・少女ものです。伊達政宗が登場しますが内容はフィクションです。

誉れの競べ矢 主な登場人物

小菊・・・弓の名手。父の汚名を雪ぐため米沢城で弓の師範役、次郎七と競べ矢を試みる。

浦上靱負・・・軍学者として政宗の父の世から重んぜられていた。剣と弓の名手。

山岸次郎七・・・弓術師範。

伊達政宗

誉れの競べ矢 あらすじ(※ネタバレを含みます)

出羽の国米沢の城外、十四、五人の騎馬武者が走っている。先頭の若い武将は伊達政宗、鷹狩りをしての帰り途、獲物の少ない日で彼は不機嫌だった。馬を急がしていると左手から凄まじい羽ばたきをしながらおおとりが舞い立った。「次郎七、射止めよ!」しかし矢は外れた。「鷹をかけろ!」しかし鷹もそれてしまった。「止め立て無用!射止めよ!」しかし大空高く舞い上がった鷹をどうして射落とすことができよう。その時である。びょう!と鳴り鏑の音がして空を斬る矢一筋。あっという間に鷹の翼を貫くと見え、つーと一文字に落ちてきた。政宗はじめ扈従の者たちが振り向くと櫟林の中から静かに下りてくる一人の娘があった。

かん太
きりりとした小菊が活躍するよ!

誉れの競べ矢 覚え書き

鏑矢(かぶらや)・・・鏑をつけた矢。射ると大きな音響を発して飛ぶ。狩猟用の野矢のひとつ。

羽交(はがい)・・・鳥の左右の翼が重なるところ。

山峡(やまかい)・・・山の迫った谷間。

森閑(しんかん)・・・物音ひとつせず、静まりかえっているさま。

籠居(ろうきょ)・・・家に閉じこもって外に出ないこと。

緒口(いとぐち)・・・きっかけ、手がかり。

猟衣(かりぎぬ)

小褄(こづま)・・・着物のつま。

次第(ついで)

暗愚(あんぐ)・・・物事の是非を判断する力がなく、愚かなこと。

逐電(ちくでん)・・・敏速に行動すること。特に、すばやく逃げて行方をくらますこと。

書見(しょけん)・・・書物を読むこと。読書。

奸計(かんけい)・・・悪いはかりごと。悪だくみ。

奸悪(かんあく)・・・心がねじけていて悪いこと。また、そういう人や、そのさま。

活眼(かつがん)・・・物事の道理や本質を良く見分ける眼識。

諫言(かんげん)・・・目上の人の過失などを指摘して忠告すること。また、その言葉。

畏怖(いふ)・・・おそれおののくこと。

 

 

 

豪傑ばやり 山本周五郎

【朗読】豪傑ばやり 山本周五郎 読み手アリア

【朗読】豪傑ばやり 山本周五郎 あらすじ

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。豪傑ばやりは、昭和15年(1940年)講談倶楽部に掲載されました。37歳の作品です。戦の時代が去り、豪傑たちが武勲を売りに職を求める元和の世。大言壮語する浪人たちの中で、静かに馬を洗う男・馬頭鹿毛之介。彼は名も禄も望まず、ただ一頭の馬と、一人の娘の微笑みに心を寄せます。だが、偽りの豪傑・夏目図書の登場によって家中は浮かれ騒ぎ、鹿毛之介の誠実な影はどんどん霞んでゆきます。そして豪傑・夏目調所の娘・萩枝への無礼をきっかけに、男の本当の強さが試されていきます。

豪傑ばやり 主な登場人物

馬頭 鹿毛之介(ばとう かげのすけ)

  • 本名:夏目 図書 重信(なつめ ずしょ しげのぶ)

  • 大坂の役で名を馳せた浪人隊の真の豪傑。実は変名を使い、名を伏せて三春に潜伏していた。

  • 馬の世話をしながら静かに暮らしていたが、誠実で実直な人物。剣技にも優れ、真の意味で「強い」男。

萩枝(はぎえ)

  • 苅屋源太兵衛の娘。18歳。

  • 健康で甲斐甲斐しい美しい娘。鹿毛之介に恋心を抱く。

大海 鱒八(おおうみ ますはち)

  • 鹿毛之介の同僚。人懐こく、鹿毛之介を心から尊敬している。

  • 夏目図書が来て屋敷の空気が変わる中でも、ただ一人鹿毛之介の「本物」を見抜いていた。

苅屋 源太兵衛(かりや げんたべえ)

  • 萩枝の父。三春藩の侍大将。

  • 名将であるが、権威や豪傑に弱い一面がある。鹿毛之介の正体を知って驚く。

秋田 河内守 俊季(あきた こうちのかみ としすえ)

  • 三春藩藩主。夏目図書を召抱えたかったが、彼の辞退を尊重する。

荏柄 宮内(えがら くない)/鼻の九十郎(はなのくじゅうろう)/富田 七兵衛(とみた しちべえ)

  • 鱒八と同じ頼士長屋の面々。自称・元豪傑。夏目図書の影響で豪傑気取りになる。

偽 夏目図書

  • 千五百石で召抱えられた、実は偽物の「夏目図書」。

  • 酒と女に溺れ、武芸も偽物。

早瀬 伝右衛門(はやせ でんえもん)

  • 水野勝成の家臣。真の夏目図書(鹿毛之介)を知っており、最後に彼の正体を明かす。

アリアの備忘録

名声よりも誠実さ。虚勢よりも静かな胆力。そして、強さとは力ではなく、「己を偽らず、生きること」なのだ。

足軽奉公 山本周五郎 

足軽奉公 山本周五郎 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「足軽奉公」です。この作品は新潮文庫/朝顔草紙に収録されています。主人公の右田藤六は親の代からの足軽で、二十歳のときその小頭を命ぜられ、「気骨者」としてなかまの衆望を集めています。彼は槍術の師範に十五歳で入門し、現在では師範とさえ対等に勝負できる腕になっていました。

足軽奉公 主な登場人物

右田藤六・・・足軽小頭、足軽を蔑ずむ士分の言葉に怒り、友人鉄之助を槍で傷つけ妹と退国する。その時、槍ひとすじの武士になろうと誓う

汀(なぎさ)・・・兄の友人、鉄之助に嫁に欲しいといわれる日を心待ちにしている。退身した兄と流浪の旅に出る。

横井鉄之助・・・藤六の友人。藤六の槍の師範の息子。忿怒した藤六の槍が左腿に突き刺さる。

忠秋・・・お浜館といわれる藩主の弟。闊達な、悪くいえば粗暴な青年。江戸邸でもてあまされ、この国許に蟄居させられている。

足軽奉公のあらすじ (※ネタバレを含みます)

岩代のくに三春は槍術が盛んにおこなわれていた。しかし足軽は、年に一度行われる槍術の「大試合」に出ることはできなかった。槍術の師範と対の勝負をする右田藤六さえ出場できなかった。藤六は自分が修行を励むかたわら、なかまの足軽たちにも手ほどきをしてやっていた。みんな「せめて士分に取立てられたい」と熱心に稽古し上達もめざましかった。時代は泰平の世相でさむらいの気節をも毒し、士分の人々は、親代々の食録を守っていればいい、もはや合戦もない、という投げた気持ちから稽古もお役目で一般の腕も低下していた。大試合のあったその日、番頭の広間で武士たち十五、六人が足軽を蔑ずみ貶めていた。藤六は怒りに震え槍で相手をしろと云う。相手に出てきたのは友人の鉄之助だった。藤六と鉄之助の槍と槍が相打ち、藤六は大きく地を蹴りながら突っ込み、鉄之助の左腿に三寸あまりも突き刺さってしまう。このことで藤六は汀と退国し、そして藤六は槍ひとすじの武士になると誓った。そんな彼が赤穂の木賃旅籠で出会った飴売りの老人の話で・・・

かん太
老人の話で目が覚めた藤六は変わるんだ!そして鉄之助との再会。鉄之助と汀・・・

足軽奉公 覚え書き

餌差(えさし)・・・竿の先端にもちをつけ、鷹の生餌とする小鳥を捕らえること。またそれを生業とする者。

下馬評(げばひょう)・・・第三者が興味本位にするうわさ・批評

弛廃(しはい)・・・ゆるみすたれること。行われなくなること。

衆望(しゅうぼう)・・・大勢の人たちから寄せられる期待・信頼。

尚武(しょうぶ)・・・武道・武勇を重んじること。

偸安(とうあん)・・・目先の安楽を求めること。

諒解(りょうかい)・・・物事の内容や事情を理解して承認すること。

僭上(せんじょう)・・・身分を超えて出過ぎた行いをすること。

相恩(そうおん)・・・主君・主家などから代々恩義を受けていること。

無為徒食(むいとしょく)・・・なすべきことを何もしないでただ遊び暮らすこと。

忿懣(ふんまん)・・・怒りが発散できずいらいらすること。腹が立ってどうにも我慢ができない気持ち。

木賃(きちん)・・・素泊まりの客が煮炊きなどのための薪代として宿に支払う金銭。

谷峡(たにかい)・・・両側が切り立った崖からなる谷。

落魄(らくはく)・・・おちぶれること。

蟬脱(せんだつ)・・・古い因習や束縛から抜け出すこと。

高邁(こうまい)・・・志が高く衆に抜きんでていること。

恪勤(かっきん)・・・まじめに職務に励むこと。

蟄居(ちっきょ)・・・江戸時代、武士に科した刑罰の一。自宅や一定の場所に閉じ込めて謹慎させたもの。

不羈(ふき)・・・物事に束縛されないで行動が自由気ままであること。また、そのさま。

白皙(はくせき)・・・皮膚の色が白いこと。

艱難辛苦(かんなんしんく)・・・人生でぶつかる困難や苦労。

躄(いざり)・・・足が不自由で立てない人。

苦衷(くちゅう)・・・苦しい心のうち。

述懐(じゅっかい)・・・過去の出来事や思い出をのべること。

 

 

この漢字書けなーい!と思いました(汗)

 

身代わり金之助 山本周五郎

【朗読】身代わり金之助 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「身代わり金之助」です。この作品は昭和14年少女倶楽部に掲載されました。周五郎36歳の作品です。現代のドラマなどでもよく出て来る旗頭の子と郎党の子どもの取り換え話です。若様、慶太郎はわがままで怒ると言葉の区別もつかなくなり拳を振り上げる。そのわがままのお相手を申し付けられているのは同じ年同じ月に生まれた郎党の子、金之助であった。金之助は数年前に父が死んでから、病身の母を守るおとなしい性質の少年だった。

追いついた夢 山本周五郎  

追いついた夢 山本周五郎  読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「追いついた夢」です。この作品は1950年(昭和25年)に雑誌に掲載されました。2017年BSジャパン開局15周年記念特別企画「山本周五郎・人情時代劇シリーズ」で放送されました。謎の富豪老人和助が、貧しい若い娘おけいを身請けする話なのですが、話の展開が意外な方向に進んでいき、最後まで面白く読みました。

追いついた夢 主な登場人物

和助・・・両替商「近正」の番頭。自分の身の上を隠し、身請けしたおけいと世間や人間から離れて遁世しようとしている。

おけい・・・貧しく母の薬代に困り、和助の妾になろうとしている。お金を貯めて、いつかは和助に暇をもらおうと思っている。

宇之吉・・・おけいの幼馴染み。植木屋の職人でおけいと愛し合っている。

おたみ・・・おけいの母。身体が弱く三年前から病みついている。

おむら・・・おけいの住む長屋の隣人。いつも力になってくれる。

吾平・とみ・・・和助に雇われている別邸の世話をしてくれる爺やとばあや。

追いついた夢のあらすじ(※ネタバレ含みます)

娘は風呂桶から出るところだった。名はおけい、年は十七だという。和助は行燈部屋のような暗い部屋の穴から風呂場の中をじっと見守っていた。娘の躰は少しもいやらしさやみだらな感じを受けない浄らかな美しさを持っていた。彼は尾花屋で、すべての点で自分の好みに合う者、これなら満足だといえる者を探していた。和助はおけいに世話を申し出たが、実家と縁を切ること。住む家の場所を誰にも知らせないことが条件だった。おけいの母は三年越し寝ついたきりで、父が去年急死してから全てがおけいの肩にかかってきた。医者の払いも溜まり、借りも溜まり、売るものも無くなっていた。そのときすぐにおけいは肚を決めた。

 

かん太
家へ帰ると、いつもよくしてくれる同じ長屋のおむらが励ましてくれるんだ。「女に生れたからこんな悲しい思いをするんだけど、女だからこそこれだけのことができるんだよ。まだ若いんだから、いまにこんなことも笑い話にするときがきっとやってくる。生きているうちには悪いことばかりではないさ、くよくよしないで辛抱しておくれよ。」ってね。
アリア
その夜、幼なじみの宇之吉が一緒に逃げようというんだ。おけいは貧乏からは逃げられない。逃げるだけでは幸せになれないというんだ。自分たちの子どもにもみじめな辛い思いをさせたくない。逃げちゃだめ、逃げるのは負けよ、ねえ、世の中はたたかいっていうでしょ、あんたも強くなって頂戴、やけになったり諦めたりしないで辛抱強く一寸刻みでもいいから貧乏からぬける工夫をして頂戴って励ますんだ。
かん太
そして、いつか一緒になろうと約束するんだ。
アリア
四五日後、和助から迎えが来ておけいは去ってゆくんだけれど、実は和助には秘密があったんだ。どうやって富豪になったのか、ここからは朗読を聴いて下さいね。

追いついた夢 覚え書き

含羞(はにかみ)・・・恥ずかしいと思う気持ち。

遁世(とんせい)・・・隠棲して世間の煩わしさから離れること。

利慾(りよく)・・・利をむさぼる心。利益を得ようとする欲望。

凶状(きょうじょう)・・・凶悪な罪を犯した事実。

賢しげ(さかしげ)・・・いかにも才知、分別のありそうなさま。

義絶(ぎぜつ)・・・親子・兄弟など肉親との関係を絶つこと。

業が深い(ごうがふかい)・・・前世の罪深さにより、多くの報いをうけているさま。

脱疽(だっそ)・・・躰の組織の一部が生活力を失って脱落する病気。

閑居(かんきょ)・・・世俗を離れて静かに暮らすこと。また、その住まい。

御新造(ごしんぞう)・・・他人の妻の敬称。

朴訥(ぼくとつ)・・・かざりけがなく口数が少ないこと。

追従(ついしょう)・・・他人の気に入るような言動をすること。

救小屋(すくいこや)・・・江戸時代に地震・火災・洪水・飢饉などの天災の際に被害にあった人々を救助するために、幕府や藩などが建てた公的な救済施設のこと。