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水戸梅譜 山本周五郎

【朗読】水戸梅譜 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「水戸梅譜」(昭和17年)です。寛文五年の秋のある日、徳川光圀の水戸の館へ、貧しげなひとりの浪人者が、仕官をたのむためにおとずれた。光圀が水戸家を継いだのは寛文元年のことであるが、若い時分からそのすぐれた風格は世に知れ渡っていたので、いよいよ水戸二代の宰相をついだとなると、風を慕って随身をたのむさむらいたちがひきもきらなかった。

水戸梅譜 主な登場人物

徳川光圀・・・三十八歳、明敏英邁な名宰相。水戸藩主。

鈴木主税・・・水戸家の執事、仕官を願いにきた五百旗五郎兵衛の応接をする。

五百旗五郎兵衛(いおきごろべえ)(父)・・・奥州でつかえた主家が御改易で浪人となり、徳川光圀に仕官を願うが断られる。御当家水戸さまに仕官がかなわなければ、もはやこの世に望みがないと、庭うちで腹を切る。

小次郎(五百旗五郎兵衛)・・・五百旗五郎兵衛の息子。のちに父の名を継ぐ。

やす女・・・五百旗五郎兵衛の妻。小次郎の母。

くるまや六造・・・強欲、無道者の豪農。千波ヶ原の地主。

水戸梅譜 覚え書き

辛労(しんろう)・・・つらい苦労をすること。大変な骨折りをすること。

主家(しゅか)・・・主君、主人の家。しゅけ。

改易(かいえき)・・・大名の領地や身分などの没収・剥奪。

随身(ずいじん)・・・つき従っていくこと。

明敏(めいびん)・・・頭の働きが鋭いこと。物事の要点や本質をすばやくさとること。

英邁(えいまい)・・・特別に才知がすぐれていること。また、そのさま。

峻烈(しゅんれつ)・・・非常に厳しく激しいこと。

厚志(こうし)・・・深い思いやりの気持ち。心のこもった親切。

直覚(ちょっかく)・・・推理や考察によらずに瞬間的に物事の本質をさとること。

壮健(そうけん)・・・健康で元気なこと。また、そのさま。

蕭々(しょうしょう)・・・ものさびしいさま。

野守り(のもり)・・・立ち入りを禁じられている野原の見張りをする人。

落漠(らくばく)・・・ものさびしいさま。

瓶子(へいし)・・・酒を入れて注ぐのに用いる器。

害意(がいい)・・・他人を傷つけよう、害を与えようという気持ち。

 

 

 

泥棒と若殿 山本周五郎

【朗読】泥棒と若殿 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「泥棒と若殿」です。この作品は、昭和24年講談倶楽部に掲載されました。家督問題で鬼塚山の廃屋御殿に幽閉されている成信のところにある夜、泥棒が入る。廃屋ですべてを投げ出し、飢え死ぬつもりで寝ていた成信は、悪人に見えない素人泥棒伝九郎と共同生活をすることとなる。

泥棒と若殿 主な登場人物

成信・・・24歳。家督問題から廃屋にただ一人幽閉される。たびたび刺客に狙われ、食料もつき、すべてを投げ出し飢え巣にしようと思っている。

伝九郎・・・34歳。幼い頃からひどい目にばかりあっている泥棒。成信と暮らすようになって人間らしくなっていく。

 

泥棒と若殿 覚え書き

渇しても盗泉の水を飲まず・・・自分がいかに困窮していても、不正や不義理なことは一切かかわらないこと。

身銭(みぜに)・・・自分の金。

小書院(こじょいん)・・・母屋から張り出した部屋。

定日(じょうじつ)・・・前もって決めてある日。

杣道(そまみち)・・・細くて険しい道。

量見(りょうけん)・・・考えて選ぶこと。

樽ひろい・・・酒屋のでっち。

嘆息(たんそく)・・・悲しんだりがっかりして溜息をつくこと。

前栽(せんざい)・・・草木を植えた庭。または植込み。

艱難(かんなん)・・・困難にあって苦しみ悩むこと。

瘋疾(ふうしつ)・・・気がおかしくなる。

 

津山の鬼吹雪 山本周五郎 

【朗読】津山の鬼吹雪 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「津山の鬼吹雪」(昭和13年)です。太った浪人と痩せた浪人の二人連れが飢えのあまり山賊になろうとする・・・・武家もの・滑稽ものです。

津山の鬼吹雪 主な登場人物

大河治部・・・ひどく痩せた浪人者。行き詰って陣場に山賊をやってみようと誘う。

陣場大助・・・肥えた浪人者。四五日の食わず飲まず、先の望みのないことから腹を斬りたいと云う。

秋津男之介・・・年は二十四五、やせ形の長身で目鼻立ちの冴えた素晴らしい美男。

 

津山の鬼吹雪 覚え書き

落魄(らくはく)・・・おちぶれること。

妙策(みょうさく)・・・すぐれた策略。巧妙なはかりごと。

化政度(かせいど)・・・江戸時代の時期区分の一つで、年号が文化・文政の時代をいう。

弛廃(しはい)・・・ゆるみすたれること、行われなくなること。

奢侈淫楽(しゃしいんらく)・・・度を過ぎてぜいたくなこと、みだらな楽しみにうつつをぬかすこと。

飢渇(きかつ)・・・飢えと渇き。

滔々(とうとう)・・・みなぎりあふれる。勢いよく広がる。

草鞋銭(わらじせん)・・・わらじを買うくらいの金。

面魂(つらだましい)・・・強い精神・気迫の現れている顔。

怒気(どき)・・・怒った気持ち。怒りを含んだ様子。

賛嘆(さんたん)・・・深く感心してほめること。

美丈夫(びじょうぶ)・・・美しくりっぱな男子。

幾層倍(いくそうばい)・・・分量、程度が倍加すること。

噯(おくび)・・・げっぷ。

犇々(ひしひし)・・・強く身に迫るさま。切実に感じるさま。

得心(とくしん)・・・よく分かって承知すること。

 

浪人一代男 山本周五郎

【朗読】浪人一代男 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。雨が続きますね。わたしは雨降りが好きです。録音する時にザーザー降ると閉口しますが、雨の音や風の音を聞くと心が落ち着きます。傘は持たない派なので外に出るとびしょ濡れになりますが、やっぱり傘は持ち歩きたくないです。今回は、山本周五郎作「浪人一代男」です。この作品は、昭和11年講談雑誌に掲載されました。33歳の作品です。主人公の浪人、津村三九馬がとにかく強い!先が見える話ですが楽しめます。

浪人一代男 主な登場人物

津村三九馬・・・大田原藩の浪人。国家老・谷沢曹太夫の奸策により父を亡くし、母と下司払いに放逐される。

お紋・・・白狐のお紋という女白波。

不二緒・・・藩主の娘。三九馬の母が乳母で三九馬とは乳兄弟にあたる。大田原のかぐや姫と云われていた。

 

浪人走馬灯 山本周五郎

【朗読】浪人走馬灯 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「浪人走馬灯」です。この作品は昭和15年富士に掲載されました。来馬辰之介はある事情があって5年前に出羽国本庄を退国し、金沢市郎兵衛の道場で代師範を勤めていた。辰之介は人柄もよく素晴らしい腕を持っているのでしばしば諸方から仕官を推挙されていたが二度と主取りはしないと固く断っていた。辰之介は母と二人で江戸の裏長屋に暮らしていたが、代師範の手当くらいでは江戸の住居は楽ではなく、水にまで金がかかると知った初めの頃は息詰まるような気持ちだった。また婢も使えぬ身上とて自ら厨に立つ母を見ることは辛いことだった。

辰之介の「人には長所も弱点もある、善心と悪心とは誰の心にもあるものだ。しかし悪心が募ると世を毒し人を滅ぼす。拙者は世の中に性根からの悪人という者は存在せぬと信じていたが、貴様によって初めて悪人を見た。旧主家のためとは云わない。父の仇とも云わない。夜を毒し人を過る悪人として斬ってやる。」っていいですね。性根からの悪人はいない。色んな作品にでてきますがグッときます。娘との出会いも巧みに描かれて人物がとても分かりやすい作品でした。

浪人走馬灯 主な登場人物

来馬辰之介・・・背丈は五尺八寸、筋肉の締まった逞しい体つきで、いつも髭の剃り跡の青々とした顎を持ち、高い鼻のわきに大きな黒子がある。口数が少なく不愛想だが、驕らない温和な質と人の気付かぬところに親切な思いやりがあるので門人たちに敬慕されている。

金沢市郎兵衛・・・道場の主。奥羽浪人で母子二人、それ以外の身上を話したがらない辰之介を信頼し、代師範をさせている。

大河原蔀・・・但馬守政英の側用人。辰之介の父と不和の間柄だった。

但馬守政英・・・病弱で癇が強く側近の者も恐れ憚っていた。辰之介の父を左遷し、小さな誤りで切腹を命じる。

おきぬ・・・辰之介の父の組下しいた足軽頭の娘。評判娘だった。

 

渡の求婚 山本周五郎

【朗読】渡の求婚 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「渡の求婚」です。この作品は昭和31年大阪新聞に掲載されました。人に言われたことの反対の行動を取る平林渡の行動が面白い滑稽ものです。みんなが渡の性格を分かっているところが面白いです。ちなみに私の周りにも捻じれた性格の人が多いのですが、「これいる?」と聞くと「いらない」と返事をするので、「これいらない?」と聞くように心がけています。不思議なもので「これいらない?」と聞くと「いる」と答えるものです。(笑)ぜひ試してみてください! 

渡の求婚 主な登場人物

平林渡・・・三年ぶりに寄った友人の家で馳走になった時、挨拶に来た妹のゆみに惚れてしまう。

落合外記・・・渡の友人。ゆみの兄。

ゆみ・・・外記の妹。渡が好き。

勝田敬之助・・・郡奉行で明道館の師範を勤める。「鬼瓦」とあだ名がある。

 

熊野灘 山本周五郎

【朗読】熊野灘 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「熊野灘」です。この作品は、昭和17年講談雑誌に掲載されました。熊野灘の網元の二男、和田小三郎が、紀州家より献上した鯨について将軍家光に鯨突きのしだいを言上します。和田小三郎の祖先は鎌倉幕府に仕えた朝比奈義秀の裔でした。将軍家光は小三郎の不屈なつらだましいを好きになり、しばらく話し相手として江戸城に留めるうちに彼が朝比奈義秀の血統であることを知り小三郎に千石で和田家を立てよと武士になることをすすめるのでした。

鯨突きの描写は目に見えるようで迫力がありました!まず漁夫が鯨の背へ飛び乗って利刀で鯨の背を貫き、その間に鯨は海中に沈みあるいは水面に浮かび、波濤の間を縦横無尽に暴れまわる。わきたつ泡、飛び散る飛沫、渦巻き返す海面に出没狂奔する鯨と人と命を賭して戦うこのありさまを熊野灘のあらくれどもは華と呼ぶ。そして水中をくぐること幾十たび、鯨の背を突き貫いて太綱を通し、左右の舟へ綱を繋ぎ陸地へ揚げる。この仕方をてがたとりと云って熊野灘の漁夫だけが持つ独特の方法です。暴れるクジラの背へ乗るなんて危険すぎやしませんか・・・。

熊野灘 主な登場人物

和田小三郎・・・二十四歳、和田屋忠兵衛の二男。

お美代・・・十八歳。十一二歳のころから和田屋の家に女中奉公にきている。色白の愛くるしい顔立ちに気質のおとなしいしっとりと落ち着いた娘。

和田屋忠兵衛・・・朝比奈義秀の裔。小三郎が武士になることを喜ぶ。

清太郎・・・和田屋の長男。てがたとりで命を落とす。

徳川家光・・・小三郎の不屈なつらだましいを好きになる。

お秋・・・小三郎の乳母、お美代の母親。

安藤帯刀直次・・・紀伊徳川家の老臣。

 

 

 

 

燕(つばくろ) 山本周五郎 

燕(つばくろ) 山本周五郎 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は山本周五郎作「燕」です。周五郎作品にもう一つ「つばくろ」(昭和25年)と平仮名のタイトルがありますが別の作品です。燕は昭和35年に雑誌に掲載されTVドラマで放映されました。話は、若い者と娘たちが、一年に一度だけ半ば公然と席を並べる茸狩りの日に、皆が集まる佐藤家の庭で起こる出来事を今、茸狩りを楽しむ「若い人たち」と、若い頃に茸狩りを楽しんだ「老臣たち」に分けて書かれています。読みながら、まるで映画をみているような気持ちにさせられました。

燕(つばくろ)主な登場人物

≪老臣たち≫

佐藤又左衛門・・・藩史に残る歴代に比べる者のない名家老といわれてた。庄野が江戸家老を辞したのを機会に、旧友を夕餉に招待している。

梶本源次郎(枯泉)・・・土佐派の人気絵師。義歯を入れている。強情な性格。茸狩りなどの音頭取り。

庄野重太夫・・・元江戸家老。肝臓を病んでいて、夏風邪がなかなか治らない。奥歯がなく硬いものは食べられない。

渡貫義兵衛・・・元交代寄合の元締まり。女房が死んだらすぐさま若い側女を置くつもり。

新原宗兵衛・・・この日の朝、吐血して亡くなる。若い頃、又左衛門と同じ女を好きで自分が彼女を娶った。

≪若い人たち≫

佐藤正之助・・・佐藤又左衛門の孫。畑中早苗の許嫁者だが、阿部雪緒にもちょっかいを出す・・・すばしっこいやつ。

畑中早苗・・・畑中采女の妹。佐藤正之助の許嫁者。

畑中采女・・・畑中早苗の兄。雪緒の許嫁者。雪緒が席へ泣いて戻るのを見て一緒にいた正之助に怒る。

阿部雪緒・・・畑中采女の許嫁者だが、佐藤正之助に誘われて・・・・・

渡貫藤五・・・渡貫義兵衛の孫。藩政改革に熱く燃える若者。

燕(つばくろ)のあらすじ(※ネタバレ含みます)

今日は一年に一度の「茸狩り」の日。男女が半ば公然と行動を共にすることができる。舟遊びの音や歓声、歌声が聞こえてくる。正之助は雪緒を誘ったり早苗を誘ったりしている。渡貫籐五は藩政改革の火を放つため、老臣の一人でも斃そうと様子を窺っている。佐藤又左衛門をはじめ老臣たちは懐旧談と美味いものに浸っている。

かん太
章ごとに、場面が若者たち→老臣たちと切り替わって面白いです。
アリア
名家老とその孫のタイプが全く違うところや、渡貫とその孫のことも巧く書かれています。

燕(つばくろ)覚え書き

一揖(いちゆう)・・・軽くお辞儀をすること。

小酒宴(こざかもり)・・・人々が集まり酒を酌み交わして楽しむ会

凡俗(ぼんぞく)・・・ありふれていてとりえのないこと。

賤民(せんみん)・・・身分の低い民。

治績(ちせき)・・・政治上の功績。

悠暢(ゆうちょう)・・・のんびり、ゆったり

別墅(べっしょ)・・・別荘。別邸。

女色(じょしょく)・・・女性の性愛。

徳義(とくぎ)・・・人として守るべき道徳上の義務。

婦徳(ふとく)・・・女子の守るべき徳義。

劬る(いたわる)

紊れる(みだれる)

誅殺(ちゅうさつ)・・・罪をとがめて殺すこと。

舷燈(げんとう)・・・船舶が掲げる色灯。

 

 

牡丹花譜 山本周五郎

【朗読】牡丹花譜 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「牡丹花譜」です。この作品は昭和13年、婦人倶楽部に掲載されました。主人公の黒上奈々は十八歳、黒上家の牡丹畑に繚乱と咲く牡丹の花にも勝るとて、黒上家の牡丹姫と呼ばれています。幼い頃から武張った事が好きで、小太刀や薙刀をよく遣い、馬にかけては男も及ばぬ腕を持っていました。そんな美しい奈々に胸を焦がす従兄の常次郎は、日毎につのっていく胸の想いをどうかして伝えたいと思っていました。しかし奈々の心は固い蕾のように閉じてひらかず、手に掴んだと思うといつかするりと身を躱すのでした。ある日、いつものように常次郎と稽古に励んでいた奈々は、五人の荒武者が白面の青年を取り囲んでいるのを発見し、即座にそこへ駆けつけその青年を助けます。それから奈々は、助けた青年のことが忘れられなくなるのでした。

かん太
奈々は生まれて以来かつて知らなかった悩み、胸いっぱいに膨れ上がってくる情熱、鳥の声も、風に戦ぐ木の葉の音も、みんなあの青年の声音に聞こえるようになり、花を見ても雲を見ても、目を遮るものはあの青年の面影と重なるようになるんだ。乙女の恋だよ!
アリア
奈々の初恋だね。そして彼は奈々に逢いにくるんだよ。そして奈々は彼に名前を聞くんだ。ドキドキするね。

牡丹花譜 主な登場人物

黒上奈々・・・十八歳、仙台伊達領、岩沼の豪家黒上家の一人娘。早く父母を失い、叔父銕兵衛の後見で育つ。黒曜石のような瞳を持ち「黒上家の牡丹姫」と呼ばれる。

常次郎・・・二十歳、仙台伊達領、郷士城田銕兵衛の次男。奈々とは従兄同志。奈々に恋している。

陸奥守綱村・・・六十余万石の領主。細面で相貌が女のように弱々としていながら、高い額、濃い眉のどこやらに、冒し難い高貴な威の閃く人。五人の荒武者に囲まれているところを奈々に助けられる。

牡丹花譜 覚え書き

絖(ぬめ)・・・生糸を用いて繻子織にして精練した絹織物。生地が薄く滑らかで光沢がある。

草臥れる(くたびれる)・・文中ふりがなより

毟って(むしって)

草仏(くさぼとけ)・・文中ふりがなより

清絹(すずし)・・・織目が荒く軽くて薄い織物のこと。

仰反(あおのけ)・・・あおむいて後ろへ反り返る。

日毎(ひごと)・・・毎日。ひび。

白面(はくめん)・・・色白の顔。

争闘(そうとう)・・・あらそい戦うこと。

お許(おもと)・・・二人称の代名詞。主として女性を親しんでいう語。

連銭葦毛(れんせんあしげ)・・・馬の毛色の名。葦毛に灰色の丸い斑点の混じっているもの。

嫋々(なよなよ)

悄然(しょうぜん)・・・元気がなく、うちしおれているさま。

亭(ちん)・・・休憩したり、雨や日光を避けて涼んだり、景色や季節の移ろいを眺めたりするためのあずまや。

暮靄(ぼあい)・・・夕暮れに立ち込める靄、夕靄。

入輿(にゅうよ)・・・身分の高い人が嫁入りすること。

恩顧(おんこ)・・・情けをかけること。よくめんどうをみること。

苦衷(くちゅう)・・・苦しい心のうち。

承引(しょういん)・・・承知して引き受けること。

気息奄々(きそくえんえん)・・・息が絶え絶えになって、今にも死にそうなさま。

押し拉がれる(おしひしがれる)・・・無力感におそわれる。

崩折れる(くずおれる)・・・衰弱する。崩れるように倒れる。

無量(むりょう)・・・はかることができないほど多い。

長久(ちょうきゅう)・・・長くつづくこと。

 

 

 

 

 

生きている源八 山本周五郎 

【朗読】生きている源八 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「生きている源八」(昭和19年)です。この作品は終戦少し前に発表されました。一億玉砕がスローガンだった時に、「どんな戦いでも死なずに生きて還る源八郎の話」は、周五郎先生の反戦の思いが感じられます。

生きている源八 主な登場人物

兵庫源八郎・・・徳川家康旗下の酒井左衛門尉忠次に属する徒士組三十人がしら。どんな激戦にも必ず生きて還る。

酒井左衛門尉忠次・・・徳川家康の武将。源八の戦いぶりに苦笑し、武田軍の偵察に行かせると復命は精しく明確でひそかに舌を巻く。

小林大六・・・源八の同輩でつねづね源八郎を白い目で見、とかく悪評をふりまきたがる男。

太田助三郎・・・徒士組の旗がしら。源八の戦いぶりを見て源八を評価している。

生きている源八郎のあらすじ (※ネタバレを含みます)

兵庫源八郎は、五尺そこそこの小男で、色の黒い目じりの下がった、しかんだような顔つきで、どうひいき眼にみても豪勇の風格とはいえない。いくたびも合戦に出ているが、これといってめざましい功名をたてたことはなかった。しかし、だんだん存在を認められて、二十五歳で三十人がしらに取り立てられた。源八はどんな激しい合戦にも必ず生きて還る。その隊が殆ど全滅しても彼だけは不思議に生きて還るのだ。あいつ藪にでも潜り込んでいたのだろう、五たびのうち三どまで隊士を全滅させて、些かも忸怩たる風がないことが、おのれ一人のめのめと生きていると同輩の小林大六は面と向かって悪口を云った。元亀三年、三方ヶ原の合戦に敗れた徳川軍にとって長篠はまさにその報復戦だった。酒井左衛門尉忠次は武田軍の配備を偵察する必要を感じたが、厳重な哨戒を突破して偵察することは困難だった。誰をやるべきか・・・考えるうち、源八の名を思い出した。さっそく源八を呼ぶと、一人では難しいので小林大六を連れて行くと云った。

アリア
源八の偵察は意表をついたやり方だよ。彼の人柄に敵の兵も本塁の布陣の模様を全て問われぬことまですすんで話すんだ。見事な作戦だよ!
かん太
源八郎がいるだけで、その隊ぜんたいが見違えるほど明るく活気だつんだよ。彼がいるといないとでは隊のようすが違うんだ。最後の場面も彼の人柄がよく表れていてほっとします。

生きている源八 覚え書き

旗下(きか)・・・大将の旗印のもと、また大将の支配下。

しかんだ・・・顔や額にしわが寄る。

悪口(あっく)

迫合(せりあい)・・・勝負などにおいて激しくやり合うこと。

瀕した(ひんした)・・・ある重大な事態に今にもおちいろうとする。

屍山血河(しざんけつが)・・・死体が山のように積み重なり、多くの血が川に流れること。激しい戦闘のあったあとのようす。

惨憺(さんたん)・・・いたましいこと。なげかわしいこと。

血刀(ちがたな)・・・血のついている刀。

忸怩(じくじ)・・・深く恥じ入ること。

糾す(ただす)・・・事の是非、真偽、事実や真相などを追及すること。

緊密(きんみつ)・・・物と物とがすきまなくくっつくこと。

詳述(しょうじゅつ)・・・くわしく述べること。

哨戒(しょうかい)・・・敵の襲撃を警戒して、見張りをすること。

五月闇(さつきやみ)・・・陰暦五月の、梅雨が降るころの夜の暗さ。またその暗闇。

草臥れ(くたびれ)

葉末(はずえ)・・・葉の先。先端。

暁闇(ぎょうあん)・・・あかつきやみ。夜明け前、月がなく辺りが暗い事。

誰何(すいか)・・・相手が何者かわからないときに、呼び止めて問いただすこと。

杣道(そまみち)・・・杣人(きこり)しか通らないような細くて険しい道。

夜陰(やいん)・・・夜のやみ。夜の暗さ。

過言(かげん)・・・言い過ぎ。かごん。

笑殺(しょうさつ)・・・大いに笑わせること。また、あざ笑うこと。

挺進(ていしん)・・・他の大勢に先んじて進むこと。

叱呼(しっこ)・・・大声で呼ぶこと。怒鳴ること。

究竟(くっきょう)・・・きゅうきょう。物事をきわめた最高のところ。

哄笑(こうしょう)・・・大口を開けて笑うこと。どっと大声で笑うこと。