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目次

枡落し 山本周五郎

【朗読】枡落し 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「枡落し」です。この作品は、昭和42年63歳の作品です。小説新潮に掲載されました。「ねえ、死にましょうよ――」世間の冷たい視線と極貧の暮らしに絶望し心中を願う娘・おうめと、苦しみの中でなおも生き抜く道を探し続ける母・おみき、運命に翻弄されながらも必死に未来を掴もうとする親子の愛と選択を描いた、涙なしには読めない感動の江戸人情ドラマです。

枡落し あらすじ

江戸の片隅で、貧しさと世間の冷たい視線に晒されながら生きる母・おみきと娘・おうめ。彼女たちの運命は、夫であり父であった千太郎の罪によって大きく狂わされた。千太郎は賭場で人を殺し、囚われの身となる。近所の人々は、かつて親しく助け合っていたはずのおみきとおうめを「人殺しの家族」と嘲笑し、見捨てた。絶望したおうめは「おっ母さん、一緒に死にましょう」と訴えるが、おみきは「生きること」を選ぶ。彼女たちのそばには、幼なじみの芳造がいた。幼い頃から母親に愛されず、寒い川で蜆(しじみ)を取りながら生きてきた芳造は、おうめに想いを寄せ、「一生を賭けてもお前を幸せにする」と誓う。おみきは、かつての自分と千太郎を重ねながらも、娘の幸せを願い、二人の未来を見守ることにする。そんな中、千太郎が「無実の罪で捕らわれている」と告げる男・幸助が現れる。おみきは心を揺さぶられる。

枡落し 主な登場人物

◆ おみき(母)
 本作の主人公。鼈甲(べっこう)の加工職人。かつては裕福な家の娘だったが、父の死後、夫・千太郎の素行が悪化し、貧しい暮らしへと転落。夫が人殺しの罪で捕らえられた後、世間から冷たい目を向けられながらも、娘・おうめと共に懸命に生きることを選ぶ。過去の苦しみや後悔を抱えつつも、娘の幸せを最優先に考えている。

◆ おうめ(娘)
 17歳。母と共に貧しい暮らしを送るが、父の罪によって更なる苦難を味わう。世間の偏見や辛い過去に耐えられず、母に「一緒に死にましょう」と訴えるほど絶望していた。しかし、幼なじみの芳造の存在に救われ、やがて彼と共に新しい未来を築こうと決意する。

◆ 千太郎(父)
 おみきの夫であり、おうめの父。かつては真面目な職人だったが、義父(おみきの父)が亡くなった後に酒や博打に溺れ、家族を顧みなくなる。おみきやおうめから金や物を奪い、暴力を振るうようになった。最終的に賭場で人を殺し、囚われの身となる。物語終盤で八丈島へ島流しにされたことが判明し、もう二度と戻ることはない。

◆ 芳造(よしぞう)
 23歳。「伊予巴(いよともえ)」という鼈甲屋の職人で、おうめとは幼なじみのような関係。幼少期に母親に愛されず、寒い川で蜆(しじみ)を取りながら生きてきたという過酷な過去を持つ。おうめを深く愛し、「一生をかけて幸せにする」と誓う。千太郎の冤罪疑惑を調べ、詐欺師の企みを見破る。最終的に、おうめとの結婚を見据えて自分の店を持とうとする。

◆ 縄屋 喜六(なわや きろく)
 猿屋町の家主で、御徒町の差配・吉兵衛の幼なじみ。おみき親子が引っ越してきた後も、親身になって世話を焼く。威勢のいい性格だが、人情深い。

◆ 吉兵衛(きちべえ)
 御徒町の差配(大家のような役割)。千太郎が捕まる前からおみき親子の境遇を知っており、何かと助け舟を出していた人物。

◆ 幸助(こうすけ)
 千太郎と同じ牢にいた男。おみきに「千太郎は無実だ」と偽りの話を持ちかけ、金を騙し取ろうとする詐欺師。芳造によって計画を見破られ、番所(役人)に突き出される。

◆ 大蛇の辰(だいじゃのたつ)(架空の人物)
 幸助が「千太郎の無実を証言できる」と話した架空の生き証人。実際には存在しなかった。

◆ おみきの父
 鼈甲職人として名高かったが、酒好きで早くに亡くなる。おみきを溺愛し、彼女に千太郎との結婚を決めさせた人物。千太郎の本性を見抜けなかったことが、娘の人生を狂わせたともいえる。

◆ 芳造の母
 夫をこき使いながら、若い男たちと酒を飲んでいたという奔放な女性。芳造が幼い頃に蜆売りをさせ、彼の人生に深い傷を残した。最終的に芳造は母を捨て、二度と会うことはなかった。

アリアの備忘録

おみきとおうめは、千太郎の罪によって「人殺しの家族」として世間から冷たい目を向けられます。かつて親しく付き合っていた人々も手のひらを返したように態度を変え、親子は孤立してしまいます。人々の関心や善意は状況次第でいとも簡単に変わる という現実、そして世間とは非情なものであり、助けてくれる人もいれば簡単に見捨てる人もいる。人は結局、自分の力で生き抜かなければならないということでしょうか。また、冒頭でおうめが「死にたい」と訴えるほど絶望しています。しかし母・おみきは考え続け、結局「生きていく道を探す」ことを選びます。おうめは最終的に幸せになることを選んで、新しい道を開きます。そしておみきと千太郎の夫婦は、愛情のない結婚でした。おみきは「夫を本当に愛したことがあっただろうか?」と自問し、千太郎がぐれたのは「自分のせいでもあるのか」と考えます。一方、おうめと芳造の関係は、互いに深い愛情があるからこそ成り立っています。芳造は、おうめのために戦い、彼女を幸せにしようと努力する。愛で人は変わることができるということですね。最終的におみきはおうめの幸せを守ることを選びました。

この物語はおみきの視点を中心に描かれ、千太郎の気持ちや彼の視点は一切描かれていません。千太郎がなぜぐれたのか、なぜおみきや娘を顧みずに暴力や博打に走ったのか、彼自身の内面が語られることはなく、すべておみきの視点から「結果」として語られています。これは周五郎氏の意図的な構成かもしれません。物語のテーマは「おみきとおうめがどう生きるか」にあるため、千太郎の事情や心情を掘り下げることよりも、彼が「妻と娘を苦しめる存在」として機能することが重視されたのではないでしょうか。また読者に「あの男は本当にどうしようもない奴だったのか?」と考えさせる余地を残しているとも言えます。千太郎の気持ちは描かれないままですが、読者は彼の境遇を知ることで、彼なりの絶望や苦しみがあったのではないか、と想像することもできます。千太郎の内面を描かないことで、おみきやおうめの苦悩がより際立ち、物語の焦点がぶれないようになっているのかもしれません。そう考えると、千太郎の描かれ方はとても計算されたものだったのではないか、と思えます。お読みいただきありがとうございました。

柘榴 山本周五郎

【朗読】柘榴 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「柘榴」です。昭和23年、周五郎氏45歳の作品です。17歳で結婚がどんなものかわからないまま松室の家へ嫁した真沙は、夫の昌蔵の自分への愛情を理解することができなかった。昌蔵もまた妻を幸せにするのは家名と金に不自由のない生活だと思って間違いを犯すのでした。

柘榴 主な登場人物

真沙・・・実家は代々の物がしら格上席で、武家の厳しい躾を受けて育つ。若さゆえか夫の愛情を理解できず、不幸な結婚生活を送る。

松室昌蔵・・・真沙の夫。家系が没落し、自らの不遇を恥じながらも真沙を幸せにしようと努力する。しかしその野心が災いして失敗する。

戸沢数右衛門・・・真沙と昌蔵の仲人。真沙の結婚生活が破綻した後も彼女を助ける。

菊江・・・戸沢数右衛門の末娘。真沙が数右衛門の家に世話になっていた時に親しくなった。

昌蔵の母・・・真沙に女としてのつとめについて話すが病死する。

井沼玄蕃・・・真沙の父。お槍奉行を勤める堅苦しい人。

柘榴 あらすじ

十七歳で松室へ嫁してきた真沙は、若さゆえか昌蔵の愛情を理解することができず、結婚生活は次第に苦痛に満ちたものとなっていきました。昌蔵は家名を再興することが真沙を幸せにすることだと信じて努力しますが、無理な野心が災いして破滅の道を歩んでしまいます。彼は失敗し自ら姿をくらまします。多額の公金費消で断罪の罪となることが定まった昌蔵の妻として、本来なら妻の真沙にもお咎めがなければならないが、戸沢数右衛門の奔走で国許お構いになり色々な事情から生涯独身と決めたものが多く、そこには独立して生きる者の張りと自覚があったから、松室での生活に比べれば遥かに気楽でもあり、のびのびと解放された気持ちでいることができた。しかし心の底には、かつての結婚生活への後悔が残り続けます。晩年、田舎の静かな生活に身を置いた彼女は、老僕、伊助との交流を通じて過去の自分の若さと無理解を思い返し、昌蔵の愛情の深さに気づくようになります。

柘榴 アリアの感想と備忘録

幼い真沙が嫁いだ当初の、結婚という現実に直面し、自分の心が追いつかずに昌蔵との間に溝ができてしまう様子がとてもリアルに描かれていて心が痛みました。昌蔵は不器用ながらも真沙を心から愛していて、彼女を幸せにしようと必死でしたが、その愛情が逆に重荷となってしまうところが二人のすれ違いをさらに悲しく感じさせました。特に昌蔵が柘榴の実を真沙の躯に例える場面は、彼の愛が強すぎるあまり、真沙に恐怖を拒絶を感じさせるという象徴的で印象的な場面でした。しかし年を重ねた真沙が、徐々に過去を振り返って、若い頃には理解できなかった昌蔵の気持ちに気づいていく姿には、なんとも言えない切なさと少しの救いを感じました。伊助が昌蔵だったのかもしれないという謎は残ったけれども、最後の彼の言葉で、まさには十分な慰めになったのではないかと思います。人生には後になって気づくことや、過去を悔やむことが色々ありますが、どれをどう受け入れて生きていくかが大切だと、この話を読んで改めて考えさせられました。静かながら深い余韻を残す作品で、心にじんわりと響きました。

柳橋物語 山本周五郎

【長編朗読】柳橋物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「柳橋物語」(昭和21年)です。主人公おせんは研屋を営む祖父と二人でつましく暮らしています。おせんは幼い頃、隣に住んでいた大工の頭梁杉田屋で可愛がられます。おせんは病身の母が寝たり起きたりの鬱陶しく沈んだ家よりも、一日じゅう杉田屋で遊び暮らすことが多かった。そしておせの母が亡くなったが九つ頃、幸太と庄吉と知り合った。二人は杉田屋の徒弟であり、ライバルであり、どちらもおせんを好いていたのでした。おせんはある日庄吉に突然呼び出され、「明日から上方に行くが、自分が帰ってくるまで待っていてくれ」と告白されます。「待っているわ」と自分では何をいうのかほとんどわからずに答えるおせんに庄吉は、「幸太もおせんちゃんを欲しがっているから自分がいなくなれば幸太が云い寄ってくるだろう。でもおせんちゃんはおれを待っていてくれるんだよな。」と念を押して江戸から去るのでした。その後おせんは庄吉との約束を守って、杉田屋からきた幸太との縁談も断り、祖父のところへ通ってくる幸太にも来ないでくれと冷たく云うのでした。そんな折、おせんの祖父は卒中で倒れてしまうのでした。はじめは見舞客も多かったが段々少なくなり近所の人もあまり顔を見せなくなった。そのころから幸太がしばしば見舞いに来はじめ、中風に効く薬や食べ物を持ってきては薬を飲ませたり、額の濡れ手ぬぐいを絞りなおしたり、時には足をさすってくれたりした。しかしおせんは切羽詰まった苦しい場合につけ込まれてはならないと、ここでも幸太を拒絶するのでした。やがておせんは病床の層の面倒をみながら足袋のこはぜかがりで稼ぎ始めた。祖父もぼつぼつ起きはじめたが、左半身は不自由で舌のもつれもとれなかった。薬も祈祷も効果がなかった。そして十一月二十九日の夜、江戸に大火事が発生した。病身の祖父を抱えて火から逃げることもならず、途方にくれるおせんの前に幸太が現れる。(前篇より)

かん太
祖父を背に負って火から逃げ、おせんと祖父を命がけで守る幸太。それでもおせんは気付かない・・・。庄吉との約束で盲目になってるんだよ。恋に恋しているおせん・・・
アリア
次々と不幸が襲ってくる不運な運命のおせんを助ける江戸の見知らぬ人々。温かい人情にほっとしたよ。

柳橋物語 主な登場人物

おせん・・・十七歳~。九つで母を、十二で父を亡くして祖父の源六と暮らす。幼い頃は杉田屋でよく遊び暮らしたが、十三四歳から家事や祖父の使い走りなどをし、祖父が病床についてからは足袋のこはぜかがりをする。やがて松造の手助けで八百屋を始める。

源六・・・六十七歳。おせんの祖父。研屋。

幸太郎・・・おせんが大火事のとき拾った子。

幸太・・・おせんと幼馴染。杉田屋の巳之吉の遠い親戚すじにあたる。十三の春から徒弟に入りのちに養子となる。口のききかたもすることもはしっこい少年だった。おせんを想っているが拒絶される。

庄吉・・・おせんと幼馴染。両親も兄妹もない不仕合せな身の上で幸太の半年後に杉田屋へ入る。ごくおとなしい性分で背丈も低くひ弱そうな感じ。おせんと夫婦約束をして上方へ稼ぎに行く。

杉田屋・・・巳之吉・お蝶夫妻は子供がなく、おせんを可愛がり養女にと望むが断られる。幸太との縁談も断わられる。

勘十・お常・・・元煎餅屋で大火の後藁屋を始める。大火で記憶のない、赤子を抱えたおせんを助けて面倒をみてくれる。

松造・・・お常の兄。お常が死ぬ前までおせんの面倒をみていたことを引き継いで親身に世話をしてくれる。無愛想。

おもん・・・おせんの針仲間で親友。大火から身を持ち崩す。

友助夫妻・・・勘十の友人。妻に幸太郎が乳をもらう。人が良く何かと面倒をみてくれるが、ある時から態度が変わる。

栁橋物語 覚え書き

かもじ屋・・・地髪が短くて結えないときに足す添え髪を作って売るところ。髢

荷足(にたり)・・・船底に積む思い荷物。

下風(かふう)・・・ほかの支配を受ける低い地位。

諸式(しょしき)・・・物価。

惘然(ぼうぜん)・・・気抜けしてぼんやりすること。

徒弟(とてい)・・・親方の家に住み込んで技術を学ぶ少年、

訥々(とつとつ)・・・口ごもりながらつっかえながら云う。

酷薄(こくはく)・・・残酷で薄情なこと。

仮藉(かしゃく)・・・許すこと、見守ること。

風霜(ふうそう)・・・世の中の厳しい苦難や試練。

妾宅(しょうたく)・・・めかけを住まわせる家。

慄然(りつぜん)・・・恐れおののくさま。

荷葉飯(かようめし)・・・蓮の葉で巻いたモチ米を蒸した飯。

後架(こうか)・・・便所。

定命(じょうみょう)・・・前世の因縁によってきまる寿命。

逼塞(ひっそく)・・・落ちぶれて世間から離れてひっそり暮らすこと。

疱瘡(ほうそう)・・・天然痘。

朴直(ぼくちょく)・・・かざりけがなく正直なこと。

賃餅(ちんもち)・・・賃銭をとって餅をつくこと。

気ぶっせい・・・気づまりな感じ。

野分(のわき)・・・秋から冬にかけて吹く暴風。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桑の木物語 山本周五郎

【朗読】桑の木物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「桑の木物語」です。この作品は、昭和24年キングに掲載されました。体の虚弱な若殿信太郎正篤と、学友に上がった悠二郎との友情物語です。自由奔放に育った悠二郎と遊びながら段々身体が丈夫になっていく。悠二郎の育ち方が丁寧に書かれていて面白いです。桑の実を二人で食べる場面、毎年屋敷に二本ずつ桑の木を植え続ける正篤、いつまでも心に残る作品です。

桑の木物語 主な登場人物

土井悠二郎・・・双子に生まれる。武家では双子は嫌うので、生まれてすぐに舟宿に里子に出されて自由奔放に育つ。5歳で近所じゅうのガキ大将になる。7歳で生家に戻され若殿のご学友にあげられる。

信太郎正篤・・・六万三千石の藩主。体が虚弱で動作ものろくさして舌っ足らずなぼうっとしていたが、悠二郎に連れられて遊ぶうちに段々丈夫になっていく。

土井勘右衛門(虚木老)・・・老職。悠二郎の祖父。かなりの道楽者。老年まで吉原や深川でよく遊び、酒も強く俗曲にも通じて俳諧にも凝っていた。悠二郎を舟仙に預け、当人がよければ船頭にでもなるがいいと云った自由主義者。舟仙には悠二郎を大事に扱わず、たいていな悪戯は叱らず野放しに育てるよう厳命する。

土井忠左衛門・・・悠二郎の実父。物堅い性分で、留守役という社交的な勤めにいながら酒も多くはたしなまず、たった一つ金魚を飼うという趣味の他、碁将棋も知らないという風だった。

おみつ・・・舟仙の仙吉とおつねの娘。悠二郎と四つ違い。

新泉小太郎・・・優等生、悠二郎と一緒にご学友にあがる。

原精一郎・・・悠二郎と一緒にご学友にあがった「くいしんぼう」

桑の木物語 覚え書き

致仕(ちし)・・・官職を退くこと。

無埒(むらち)・・・めちゃくちゃ。

奇矯(ききょう)・・・言動が普通ではないこと。

無為(むい)・・・何もしない。

中興(ちゅうこう)・・・いったん衰えた物事や状態を再び盛り返すこと。

豪放磊落(ごうほうらいらく)・・・度量が広くて大胆で小事にこだわらないこと。

強飯(こわめし)・・・おこわ

代赭色(たいしゃいろ)・・・褐色を帯びた黄色または赤色。

滔々(とうとう)・・・みなぎりあふれる。

返報(へんぽう)・・・人がしてくれたことに対して報いること。

嘆賞(たんしょう)・・・すぐれたものとして感じ入ること。

展墓(てんぼ)・・・墓参り。

靖献遺言(せいけんいげん)・・・江戸前期の思想書。

日鑑(にっかん)・・・主に寺院などの日記。

浅黄裏(あさぎうら)・・・遊里で江戸勤番に出てきた野暮で武骨な田舎侍をあざけって呼んだ言葉。

深間(ふかま)・・・男女が別れられないほどの深い仲になること。

 

 

 

 

梅月夜 山本周五郎 

【朗読】梅月夜 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「梅月夜」(昭和16年)です。若いうちから古武士型の謹直家である高沖千之助は、弛廃した寛政気風の連中からひどく煙たがられていた。そんな彼に起こる四日間の出来事が描かれています。

梅月夜 主な登場人物

高沖千之助・・・駿河の国、田中藩の馬廻り番頭で三百石を取り、国家老成田別所の娘、菊枝と婚約している。

井波太吉郎・・・千之助の朋友。千之助をいつも助ける。

宮松金五郎・・・父の敵を討つために妹・松代と共に田中藩へやってくる。

松代・・・金五郎の妹。言葉の端々、挙措動作に云いようのない情の密さと温かいゆたかな感じが溢れる。

成田銀之丞・・・軽率な質で、幾度か酒の上の喧嘩沙汰があり江戸詰になっていた。冬の初め、酔って喧嘩し金五郎の父を斬った。

菊枝・・・十八歳で冷たい陶器のような美しさを持つ。千之助の婚約者。兄おもい。

原久馬・・・成田別所の甥。銀之丞の隣に住む。槍と小太刀の名人。

梅月夜のあらすじ(※ネタバレを含みます)

高沖千之助は客間で井波太吉郎と婚約者の話をしていると突然、庭前に白刃を手に青い顔をした若侍が、親の敵を討ちもらし、助勢の人数に追い詰められ、匿ってほしいと逃げ込んできた。彼の父を酔って売った喧嘩で無法に斬り伏せたのは、国家老・成田別所の二男、銀之丞だった。この仇討は尋常のことでは難しいと金之助は思った。相手が国家老の子であるため、家中の者はみんな遠慮するであろうし、彼は助勢の者を二人斬っている。彼を守るためには主君の上意を乞う他に手立てはなかった。

かん太
金五郎が逃げ込んだときに牡丹雪が舞う場面があるよ!灯点し過ぎのころ、客間の小窓の障子にときおりさらさらと舞いかかる音が聞こえるんだ。しんと空気の冷えた感じがよかった。
アリア
今回の植物は、菖蒲と梅でした!菖蒲は、千之助が端午の節句に招かれた時、菊枝が庭の池畔で花を切っているのを見かけます。梅は、木賃宿に松代を訪ねていったとき、鼻のつかえそうな中庭に一本の老梅がふくらんだ蕾をつけてます。また千之助が立ち退いた見禰山の宗洞寺の庭にも梅の老木が出てきます。それぞれの花が二人の女性をよく表していると思いました。

梅月夜 覚え書き

一紙半銭(いっしはんせん)・・・ごくわずかなもの。特に仏家で寄進の額のわずかなことにいう。

池畔(ちはん)・・・池のほとり。池のはた。

眉宇(びう)・・・眉を目の軒と見立てていう眉のあたり。

古武士(こぶし)・・・剛毅実直な昔の武士。風格が備わり、剛直で信義を重んじる武士。

勤直(きんちょく)・・・慎み深くて正直なこと。

弛廃(しはい)・・・ゆるみすたれること。行われなくなること。

助勢(じょせい)・・・力を添えて援助すること。また、その人。

理非(りひ)・・・道理にかなっていることと外れていること。

狼藉物(ろうぜきもの)・・・乱暴をはたらくもの。

浅傷(あさで)・・・軽い傷。

意趣(いしゅ)・・・恨みを含むこと。また、人を恨む気持ち。

歴々(ありあり)

亀鑑(きかん)・・・行動や判断の基準となるもの。手本。

慚愧(ざんき)・・・自分の見苦しさや過ちを反省して心に深く恥じること。

木賃宿(きちんやど)・・・粗末な安宿。

些少(さしょう)・・・数量や程度がわずかなこと。

 

 

 

 

 

梅雨の出来事 山本周五郎  

梅雨の出来事 山本周五郎 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「梅雨の出来事」です。この作品は、昭和27年に雑誌に掲載されましたが、前編が見つかっていません。後編だけでも楽しめますが、前編も読みたかったです。

梅雨の出来事 主な登場人物

堀保之助・・・山牢から逃げた囚人に二度も遭遇する。女性に付文などもらうモテ男。普請奉行。

しの・・・保之助の妻、子どももないため自分に自信がもてない。モテる良人に嫉妬している。

坂井又兵衛・・・保之助の友人。町奉行で山牢から囚人が逃げた件で総指揮者をしている。

源八郎・・・しのの兄。

島田内記・・・暴慢で凶暴な重職

梅雨の出来事のあらすじ(※ネタバレ含みます)

保之助は一人の怪しい人間を見かけた。黒装束に白い頭巾という忍び姿で、武家屋敷を窺おうとしていた。声を掛けるといきなり斬り込んできた。躱しようもなく保之助は大泥溝にとび込んだ。背中から斬られ、雨合羽と着物が大きく切れた。そしてそのまま坂井又兵衛の家に行った。その晩は坂井家で集まりがあった。皆にわけを聞かれ、ことのあらましを話した。するとそこへ若い家士が走って来て、又兵衛に何か変事が起こったことを伝えた。又兵衛は立って行ったがすぐ戻って来て、「山牢の囚人が逃げた。おそらく保之助が見かけた男だろう。」と云った。城下町は脅えあがっていた。夕方になると家々は戸を閉め、店を閉めた。どの辻にも警戒の侍たちが5人一組で絶えず町中を回って歩いた。保之助も毎夜、夕餉の後で三時間ぐらいずつ出かけた。組下の者たちの労をねぎらうというが、妻のしのは、それだけだとは思わなかった。雪辱のために自分で破獄者を捕まえるつもりか、もしくは三舟亭へ行ってほの字に逢うのかもしれないと思った。以前、保之助がほの字に五通の付文をもらったこと、保之助は捨ててしまえというが、しのは捨てるまえにあけて読む癖がついていた。最近しのは、躰が不調でヒステリーを起こすので、「ちのみち」にかかったと思っていた。その夜、又兵衛のもとに同心が走り込んできた。「曲者を島田内記が斬伏せた」と云うのだ。又兵衛は思った。島田内記が破獄者を斬ったとすれば、彼の暴慢を増長させ、手柄を振りかざし、それを兇暴の縦に使うにちがいない。又兵衛はすぐに現場へ走っていった。

かん太
梅雨の出来事なので、ずっと雨が降っています。雨合羽や笠、高下駄も雨を盛り上げます!事件解決と共に暦の梅雨があけ、にわかに夏らしい夏が始まります。芙蓉が咲き、縁側で蚊遣りをたいて団扇を使い、スッキリと話は終わります。

梅雨の出来事 覚え書き

泥溝(どぶ)

変事(へんじ)・・・普通でない出来事、思いがけない事件。

破獄(はごく)・・・囚人が牢獄を破って脱走すること。

無頼漢(ぶらいかん)・・・ならずもの。ごろつき

搦手(からめて)・・・城や砦の裏門。陣地などの後ろ側。

暴慢(ぼうまん)・・・荒々しく自分勝手なこと。また、そのさま。

兇暴(きょうぼう)・・・性質が残忍で非常にらんぼうなこと。

 

椿説女嫌い 山本周五郎

【朗読】椿説女嫌い 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「椿説女嫌い」です。この作品は昭和23年娯楽世界に掲載されました。江戸から赴任してきた新しい勘定奉行、折岩弥太夫が勘定奉行の事務を執り始めた。弥太夫の女嫌いは江戸屋敷で知らない者はない。妻を持たないばかりか、召使も女を置かない。赴任してきてすぐ十年倹約の思し召しが出て表でも諸用切り詰めているところ、長局の畳替えをするように老女、浪尾ゆうが云いに来る。弥太夫は、これまでにも奥向の歳費が格外に多いこと、殊に目見以上の扶持外交費が目立っているため畳替えは削るように云った。この頃の幕府、大藩諸侯に共通して、藩主の婦人や側室を擁する「奥」の勢力はひじょうなもので、女官長は今日の某公卿からきているし、老女、中臈、若年寄、右筆、表使、御次、呉服などの目見以上が十二人、三之間、末がしら、中居、使番、火番、膳所番、茶所、子供、端下などの目見以下三十余人、ほとんど江戸屋敷と同じ組織を持っていた。政治の運営もこれら女官たちの好意と支持がなければうまくいかなかった。これは不均衡であり、不公正である。男女は同県でなければならない。たとえ封建伝統の世なりとて、男も人間であってみればそうそう女の専権に屈服してはいられない。弥太夫は男権確立のために戦う決心をした。畳替え拒否はその第一着手だったのである。

椿説女嫌い 主な登場人物

折岩弥太夫・・・二十六歳、二千石の老職の二男。美男でも醜男でもない、背丈は五尺七寸(173センチ)でがっちり肉の締まった体つき。面長でふっくりした顔、女嫌い。

浪尾ゆう女・・・老女。畳替えを拒否する新しい勘定奉行、折岩弥太夫が隣に越してきてから意地悪な嫌がらせを続ける。

(名前が面白い人物)

阿波照蔵(あわてるぞう)・・・弥太夫の家の家僕。

鎌谷千兵衛(かまやせんべい)・・・国老。弥太夫に「奥」に手を出さないよう忠告する。

鑓田宮内(やりたくない)・・・弥太夫の家の家扶

椿説女嫌い 覚え書き

蔑された(なみされた)

唯物的(ゆいぶつてき)・・・すべての根源を物質と考え、精神の実在を否定すること。

痴者(しれもの)・・・愚か者。

権高(けんだか)・・・プライドが高くて傲慢なこと。

嬌羞(きょうしゅう)・・・女性のなまめかしい恥じらい。

毒念(どくねん)・・・人に害を加えようとする心。

朴念仁(ぼくねんじん)・・・がんこで物の道理の分からない人。

優艶(ゆうえん)・・・やさしくしとやかなこと。

充溢(じゅういつ)・・・満ちあふれること。

嗜慾(しよく)・・・あることを好み、欲するままにそれをしようと思う心。

齟齬(そご)・・・物事がうまくかみ合わないこと。

 

 

楯輿(たてごし)山本周五郎

【朗読】楯輿(たてごし)山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「楯輿」です。槍組三十人頭を勤める神原与八郎は、豪快な生き方を好んでいました。彼は口癖のように「死にざま」ということを云いました。彼にはそう云うだけの経験があるので、出まかせの強弁ではなかった。しかし福島家には名高い勇士が多いので、与八郎くらいの身分や経歴では、さほど目立たなかった。慶長三年の秋、大崎玄蕃の屋敷で長陽の宴が催された時、長尾勘兵衛という三千五百石の老職にそれは偏狭な考え方だと批判されるが・・・

かん太
朗読30分程度の短編です。与八郎の気付きが印象的です。

楯輿(たてごし) 主な登場人物

神原与八郎・・・十六歳で初陣し、征韓の役にも従軍した。その時の働きぶりを認められて、槍組三十人頭を命ぜられる。「死にざま」が口癖。

長尾勘兵衛・・・三千五百石の老職。

松・・・長尾勘兵衛の娘。与八郎に嫁していく。

楯輿(たてごし) 覚え書き

軒昂(けんこう)・・・意気が高く上がるさま。奮い立つさま。

小事に拘泥しない(しょうじにこうでいしない)・・・小さな事柄に必要以上に気にしないこと。

拘泥(こうでい)・・・こだわること。必要以上に気にすること。

大言壮語(たいげんそうご)・・・実力不相応な大きなことを云うこと。

辛辣(しんらつ)・・・云うことや、他に与える批評の手厳しいこと。

昂然(こうぜん)・・・意気の盛んなさま。自信に満ちて誇らしげなさま。

睥睨(へいげい)・・・にらみつけて勢いを示すこと。

壮志(そうし)・・・盛んな意思。勇ましい大志。

偏狭(へんきょう)・・・自分だけの狭い考えにとらわれること。

詠嘆(えいたん)・・・物事に深く感動すること。

満座(まんざ)・・・その座に人がいっぱいになっていること。

流布(るふ)・・・世に広まること。

呼集(こしゅう)・・・分散している人を呼び集めること。

敢闘(かんとう)・・・勇敢に戦うこと。

暁闇(ぎょうあん)・・・夜明け前。月がなく辺りが暗いこと。

 

 

 

榎物語 山本周五郎 

榎物語 山本周五郎 読み手 アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「榎物語」です。この作品は1962年昭和37年に雑誌に掲載されました。主人公さわは、「榎屋敷」で育ちます。榎屋敷の東南の隅に樹齢500年以上といわれる榎が高く梢を伸ばし、枝を広げていた。さわは、この榎の前で泣いたり、国吉と言葉を交わしたり、国吉と末の約束をします。また山津波で悲劇に遭うときも榎のそばにいた。物語の後半では、山津波でなくなった葉川村に唯一残った榎の前で野点の茶をすすめ、それで暮らしをたてる。そして足助の告白も榎のそばで聞き、そして最後は榎のそばで目が開きます。どんな時も揺るがない榎の存在が心に残る作品でした。

榎物語 主な登場人物

~前半~

河見さわ・・・躰がひよわく、器量もあまりよくない。河見家の長女らしくない人のうしろに隠れたり、どこかの隅にいる。

河見なか・・・さわの妹。姿かたちも美しく愛嬌もあり、頭もすばしっこい。小さい頃から人気者。

河見半左衛門・・・代々七カ村の庄屋を勤める。さわを「まるで貰われてきたようなおかしな子」と云っていた。

国吉・・・河見家の下男。雑役。さわと末の約束をする。

足助・・・河見家の飯炊き老僕。国吉とさわが榎のところで毎日のように逢っているのを、あるじ半左衛門に告げる。

~後半~

はつ・・・柏屋の女中

おすげ・・・柏屋の女中。山津波の前、木綿問屋の健次と夫婦約束をした。泥水の中で離ればなれになってから彼と再会する日を待っている。

越前屋重兵衛・・・絹物問屋、越重。小出で指折りの資産家。山津波の際、さわと他十人余りの避難者を自分の持ち家に引き取って世話をした。さわに身寄りがないので、榎のそばに住居と茶道具を用意してくれる。

越前屋安二郎・・・越重の若旦那。月に二、三度さわの安否と不足なものはないか気遣ってくれる。三年以上もさわと結婚したがっている。

佐平(国吉)・・・河見家を出て、江戸で絹糸商の店を持つようになる。名も佐平と改めた。

榎物語のあらすじ(※ネタバレ含みます)

河見家は七代前に苗字帯刀をゆるされ、代々七カ村の庄屋を勤めていた。小出は会津藩に属し、絹と木材の集散地で、河見家でも広い木山を持っているため、庄屋のほかに藩の山方の差配を命ぜられ、榎屋敷の周りには樵たちの長屋があった。さわは躰がひよわく器量もあまりよくなかった。いつもどこかの隅か、人の後ろに隠れていた。妹のなかは姉とは反対で、姿かたちも美しく、愛嬌もあり、頭もすばしっこく小さい時から人気者だった。河見家には下男や雇人が十四五人いたが、国吉はなんにでも使われる雑役だった。男ぶりもぱっとせず、負けぬ気ばかり強くてめはしがきかず、人に親しまないので、誰にも好かれないばかりか山猿といってバカにされていた。国吉とさわの立場はどこかに共通したものがあり、早くからお互いの間に、哀れなというおもいが、ひそかにかよっていたようであった。さわが十五になった年、指に棘を刺したところに国吉が来て、何かの草の葉を焙ったのを患部に貼ってくれたことが愛情の芽生えとなった。それから二年経って、二人は榎の下で話をした。さわは、泣いていた自分を気にかけてくれた国吉に新しい感情がめざめる。それから二人はいつも榎の蔭で逢うようになった・・・周囲の者に殆ど関心を持たれていない二人は人目を忍ぶ必要はなかった。しかし、老僕足助だけはさわと国吉が榎のところで毎日逢っていることを、あるじ半左衛門に告げた。

かん太
国吉は河見家を放逐されてしまうんだ。さわは、国吉がこの土地から出てゆく前に、必ず一度は逢いにくると信じて、明け方と黄昏の人に気付かれない時刻に榎のところに行った。
アリア
数日後、二人は榎のところで逢うんだよ。初めて抱き合って末の約束をした。国吉は江戸へ行って出世し、さわを迎える。石にかじりついても出世するので待っていてくれと云った。さわも五年でも十年でも、たとえ一生涯でも国吉を待つと云った。さわはこの約束を何時も心に生きていくんだ。それは・・・続く

榎物語 覚え書き

饗応(きょうおう)・・・酒や食事などを出してもてなすこと。
機智(きち)・・・その場に応じて、とっさに適切な応対や発言ができるような鋭い才知。
叢林(そうりん)・・・樹木が群がっている林。
礫(つぶて)・・・小石を投げること。また、その石。
緩慢(かんまん)・・・動きがゆったりしてのろいこと。
劈く(つんざく)・・・勢いよく突き破る。つよく裂き破る。
咆哮(ほうこう)・・・猛獣などがほえたけること。また、その声。
土風炉(どぶろ)・・・茶の湯で土を焼いて作った風炉。
野点(のだて)・・・野外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会。
真間の手児奈(ままのてこな)・・・手児奈はうら若い乙女であったが、自分を求めて二人の男が争うのを見て、罪の深さを感じたか、自ら命を絶ったという伝説、万葉集に山部赤人に感興を覚えて詠んだ歌がある。
不調法(ぶちょうほう)行き届かず、手際の悪いこと。また、そのさま。

 

 

 

槍術年代記 山本周五郎

【朗読】槍術年代記 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「槍術年代記」です。この作品は昭和13年富士に掲載されました。雑誌「富士」は戦争中にキングが名前を変えたものです。家族みんなが読める内容が盛沢山で、文学、科学、大衆小説や為になるもの、お洒落や美容、家事やマナーなど掲載されて家族みんなが楽しめる大衆娯楽雑誌でした。(大正13年~昭和32年)この作品「槍術年代記」は早くに両親を亡くした兄妹二人の話です。兄の友右衛門は足軽ではあるが槍術に抜群の才があり藩の槍術指南役寺沢孫兵衛に早くから折り紙を付けられています。そして孫兵衛の一人息子孫次郎とは幼馴染で「友やん」「孫やん」と呼び合う間柄だった。しかしある時、士分に足軽を蔑まれたことから親友の孫次郎と立ち合い、孫次郎に怪我を負わせてしまう。

槍術年代記 主な登場人物

兵堂友右衛門・・・出羽国松山藩の足軽。父の代から十五石三人扶持。中村派の槍術に抜群の際がある。孫次郎を傷つけてから退身し、各地を転々としながら武士として仕官することを望んでいる。

小夜・・・友右衛門の妹。兄の親友孫次郎に想いを寄せている。

寺沢孫次郎・・・友右衛門の親友。槍術指南役寺沢孫兵衛の一人息子。小夜を想っている。

寺沢孫兵衛・・・藩の槍術指南役。友右衛門の腕を見込んでいる。

槍術年代記 覚え書き

後半出てきた湯治宿の女のことや、高島で隣に住む足軽の老人のことなど、もう少し深堀りで話が広がってほしかったです!ページ数の問題でしょうかね。続きを読みたい気がします。