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目次

怒る新一郎 山本周五郎

【朗読】怒る新一郎 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「怒る新一郎」です。新潮文庫「怒らぬ慶之助」に掲載されています。まだ若い頃の作品とみられ、その後の作品の祖型ともいえます。谷沢新一郎は三年前に江戸詰になったのだが、持ち前の癇癖が祟って江戸を失策り、つい先ごろ国許へ帰ったばかりである。父亡き後の親代わりの伯父の谷沢十兵衛は彼を激しく叱責し,喧嘩ばかりする新一郎に、人間はなにより我慢が大切だと諭す。

怒る新一郎 主な登場人物

谷沢新一郎・・・

思い違い物語 山本周五郎

【朗読】思い違い物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!いつもご視聴ありがとうございます、癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「思い違い物語」です。この作品は、昭和25年労働文化に掲載されました。朗読の長さが2時間40分ほどあるのでだいぶ長い作品です。ぜひ目次で区切ってお楽しみください。江戸からきた典木泰助は寄合格で奉行総務という職につき、山治家に寄宿して毎日精勤した。

思い違い物語 主な登場人物

典木泰助(兄)・・・温厚で大人しい性格。石仏とか昼のろうそくとか云われていたが大賢人に落ち着く。

典木泰三(弟)・・・二十三歳。がっちりと固太りで濃い眉毛と尻下がりな目尻と白い大きな歯を持つ。粗忽者でしゃべりすぎるため藩で厄介者となる。しかし喧嘩がめっぽう強い。

山治右衛門・・・九百二十石の中老で年寄役を兼ねる。泰助と泰三を寄宿させる。姉妹のどちらかと泰助を結婚させることにしている。泰三の粗忽に参っている。

満信文左衛門・・・城代家老。温厚な徳人、思慮綿密、喜怒を色に表さず、かつて人を叱ったことがなく、声を上げて笑わず、沈着寛容、常に春風駘蕩という人柄。

千賀・・・山治右衛門の長女。十八歳。泰助のようなおとなしい人と結婚したいと思っている。

都留・・・十七歳。勘が敏速で口が達者。白を黒と云いくるめる巧みさと、云いくるめるまでの精力的なねばり強さとは無敵である。

思い違い物語 覚え書き

大愚(たいぐ)・・・非常に愚かなこと。

大賢(たいけん)・・・非常に賢いこと。

春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)・・・春風がのどかに吹くさま。

泰然自若(たいぜんじじゃく)・・・落ち着いていて物事に動じないさま。

反噬(はんぜい)・・・動物が恩を忘れて飼い主に噛み付くこと。恩ある人に背いてはむかうこと。

乖離(かいり)・・・そむいて離れること。

頑是ない(がんぜない)・・・分別がない。

綱紀粛正(こうきしゅくせい)・・・国家の規律や秩序、また政治のあり方や政治家や役人の態度をただすこと。

清高(せいこう)・・・清らかで優れていること。

慷慨(こうがい)・・・世間の悪しき風潮や社会の不正などを怒り嘆くこと。

廉潔(れんけつ)・・・私欲がなく、心や行いが正しいこと。

艱難辛苦(かんなんしんく)・・・人生でぶつかる困難や苦労。

紊乱(びんらん)・・・秩序や風紀が乱れること。

活眼(かつがん)・・・物事の道理や本質を見分ける眼識。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋芙蓉 山本周五郎

【朗読】恋芙蓉 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「恋芙蓉」です。(昭和10年キング)伊達政宗の家臣で、朱兜隊の谷屋鞆之助と主兜隊長・杉森勘三郎は幼馴染みで、勘三郎が鞆之助を弟のように馴れ愛してきた間柄だった。悲しみも喜びも分かち合い、互いに精励しつつ、死すとも離れじと固く友情で結ばれていた。朱兜隊というのは百騎をもって組まれ、大使はいずれも果敢豪勇の人物を選び、また隊の目印ともいうべき鉢金を朱色に塗った兜は、政宗からじきじきに下賜されるという名誉の遊撃部隊であった。戦場で手傷を負って帰郷していた鞆之助は、戦場へ戻る前に小菊と夫婦約束をする。勘三郎もまた朱兜隊長に任ぜられた出世の喜びを、留守役の親族とわかってこいと五日の休暇をもらって帰郷していた。勘三郎は小菊の素振りで自分が小菊に愛されていると思い込んでしまう。

恋芙蓉 主な登場人物

小菊・・・甚左衛門の娘、勘三郎の従姉妹。

谷屋鞆之助・・・二十五歳。朱兜隊士。戦場に行く前に小菊と夫婦約束をする。

杉森勘三郎・・・朱兜隊長、小菊の従兄。早く母を失い、続いて父軍兵衛に先立たれ、甚左衛門を父とも母とも思って育った。小菊を愛している。

恋芙蓉 覚え書き

いきれ・・・蒸されるような熱気、ほてり。

夜鳥(やちょう)・・・夜鳴く鳥。

先鋒(せんぽう)・・・戦闘で部隊の先頭に立って進む者。

下賜(かし)・・・身分の高い人から低い人にものを与えること。

袂別(べいべつ)・・・別れ

精励(せいれい)・・・勉学や仕事などに精を出して勤め励むこと。

転戦(てんせん)・・・あちこちと場所を変えて戦うこと。

荏苒(じんぜん)・・・なすことのないまま時が過ぎていくこと。

月余(げつよ)・・・ひと月以上。

淋雨(りんう)・・・長雨。

奮然(ふんぜん)・・・ふるい立つさま。

険路(けんろ)・・・けわしい道。

死地(しち)・・・生きて帰れないほど危険な場所。

鞍上(あんじょう)・・・鞍の上。

闇天(あんてん)・・・暗い空。

無二無三(むにむさん)・・・わき目もふらずに一途になること。

鏖殺(おうさつ)・・・皆殺し。

 

 

愚鈍物語 山本周五郎

【朗読】愚鈍物語 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「愚鈍物語」です。この作品は昭和18年講談雑誌に掲載されました。40歳の作品です。父が遺した金を次々と人に貸し下されしてしまう平山三之丞を、叔父の加地鶴所は愚鈍だと云って家の出入りと娘美代との婚約も破談にしてしまいます。人に愚鈍といわれる三之丞が治水工事の六回のやり直しの原因を独力で解決するという話なのですが、三之丞の愚鈍があまり書かれていないので愚鈍なところがよくわからなかったかな。いや、誰にでも金を貸す好人物ぶりを人が嗤って愚鈍というのでした。しかし最後の終わり方は周五郎先生らしく楽しく読み終わることができました。

愚鈍物語 主な登場人物

平山三之丞・・・加地鶴所の甥。娘の美代とは許嫁者。塀も門もひどく朽ちた柱も根太もゆるんだ雨漏りのひどい廃屋のような住居に住んでいる。亡父が節倹して遺した源銀を他人によく貸し与えるため愚鈍と云われる。

加地鶴所・・・三之丞の叔父。気性の激しい感情を爆発させる老人。三之丞が金を次々と他人に借り取られることに肚を立てている。

美代・・・鶴所の娘。三之丞の許嫁者。

加地主水・・・鶴所の息子。美代の兄。鶴所と三之丞の間を和解させようとするが、つかみどころのない三之丞の態度にも愛情を持つ。

黒板猪七郎・・・堤普請の人事支配役。肩のいかった六尺近い巨躯で、酒焼けのした頬骨の高い顔に、へんな眸の据わったぎろりとした目をしている。三之丞に度々かねを借りる。

愚鈍物語 覚え書き

節倹(せっけん)・・・出費を控えめにして質素しすること。

そくばく・・・まとめてしばること。

酒色(しゅしょく)・・・飲酒と色事。

禍根(かこん)・・・わざわいの起こるもとや原因。

奇観(きかん)・・・珍しい眺め。他ではみられないような風景。

茫漠(ぼうばく)・・・ぼうっとしてはっきりしないさま。

賄賂(まいない)

 

 

 

戦国会津唄 山本周五郎

【朗読】戦国会津唄 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「戦国会津唄」です。(昭和12年/少女倶楽部増刊号)上杉景勝の重臣岡野左内は、猪苗代城代を勤める一万石の大身だったが、実に思い切った倹約家で吝嗇に近い生活をしていた。もちろん自然と莫大な金が溜まる道理である。左内はそれがまた何より楽しいとみえ、月に一度ずつ金蔵へ入っては、あるほどの金銀を山と積んでただ一人それを数えるのが例だった。豪放と恬淡を持って誇りとした戦国武士のあいだにあって、左内のような吝嗇や金銭を愛する気風は蔑まれ、「左内ではない、吝内殿だ」「いかにも稗野吝内であろう」と陰口を云われていた。左内自身は世間にいかなる悪評が飛ぼうが平気だった。しかし、まだ髪上げをしたばかりで、ようやく羞ずかしさを知り始めた十五の乙女小房には、それは辛く悲しいことだったのである。

戦国会津唄 主な登場人物

小房・・・十五歳、岡野左内の娘。土岐市之丞とのあいだに許嫁の約束が結ばれている。

市之丞・・・十七歳の美少年。小房の父、左内に劣らぬ武士になろうと、いつも心に誓っている。

菊枝・・・小房の親友。

岡野左内・・・一万石の大身だが吝嗇に近い生活をしている。蔭で「稗野吝内」「金貸商人」と呼ばれている。

戦国会津唄 覚え書き

吝嗇(りんしょく)・・・ひどいけち。

恬淡(てんたん)・・・欲がなく、物事に執着しないこと。

豪放(ごうほう)・・・度量が大きく大胆で、細かいことにこだわらないこと。

猩々緋(しょうじょうひ)・・・やや青みを帯びた鮮やかな深紅色。

兜の錣(かぶとのしころ)・・・兜の鉢の左右・後方につけて垂らして、首から衿の防御をするもの。

狂奔(きょうほん)・・・狂ったように走りまわること。

述懐(じゅっかい)・・・思いを述べること。

交誼(こうぎ)・・・友人としての親しいつきあい。

出精(しゅっしょう)・・・精を出して勤めること。

雪ぐ(そそぐ)・・・恥や名誉を新たな名誉で消す。

凝議(ぎょうぎ)・・・熱心に相談を重ねること。

亀鑑(きかん)・・・手本。

 

 

 

 

 

扇野 山本周五郎

【朗読】扇野 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「扇野」です。(昭和29年)こんど鳥羽の城中で御殿を修築するにあたって角屋金右衛門の熱心な推薦で襖絵を描くことになった栄三郎。襖絵の主題は「武蔵野の冬」でその年の二月から五月にかけて下絵は出来上がった。しかし四五日間をおいてみると何かしら足りないものがある。何が足りないのか、何をそこに描き加えたらいいのか。それからしばらく栄三郎は考え続けるが、頭の中でいろんな思いが絡み合って彼の気持ちをぐらつかせたり絶望的にさせたりした。そんな中、おけいのすすめで出かけた栄三郎は「桑名屋」という古い造りの料理茶屋に入り、おつるという芸妓に出会う。二人は一目会ったときから互いに惹かれあう。

扇野 主な登場人物

栄三郎・・・三十一歳。旗本の三男。少年じぶんから絵を描くのが好きで、学問所へ行くとみせては絵師のもとに通い、十六から八年ばかり教えを受けた。絵の稽古は初めの三年くらいで、あとは飲むことと遊蕩のほうが主になる。やがて勘当されて富豪の角屋金右衛門の世話になるようになる。

角屋金右衛門・・・志摩のくに鳥羽港で回船と海産物の問屋を営み、藩家稲垣氏の御用商。栄三郎の絵師としての将来を高く評価し、彼が勘当になったと聞いてすぐ生活から小遣いまで面倒をみている。

おけい・・・十八歳。角屋金右衛門の娘。愛嬌のある丸顔で、おちょぼ口やよく動くいたずらっぽい目許にまだ子供らしい感じが残るが、五尺三寸ばかりある躰は形よくのびのびと成熟して、何気ない動作にも自然と女らしい媚が表れている。

石川孝之介・・・二十六七歳。藩の家老石川舎人の長男。家老職の息子らしい落ち着きと一種の威厳がある。躰も顔もやや肥えて丸く、色が白いが大きなまたたきをしない眼には意地の悪い鋭い光がある。

おつる・・・二十四五歳の芸妓。上背のあるすらっとした躰つきで、色が白く透き通るような肌をしている。やや角ばった面長で、表情の多い小さな眼と少ししゃがれた切り口上の言葉つきに特徴がある。

扇野 覚え書き

閑寂(かんじゃく)・・・もの静かで趣のあること。

権柄ずく(けんぺいずく)・・・権力に任せて強引に事を行うこと。

壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)・・・浄瑠璃の演目。盲人とその妻の夫婦愛を描いた世話物。

切り口上・・・一語ずつ区切ってはっきりいう言い方。

不義者(ふぎもの)・・・同義に外れた人。

揮毫(きごう)…文字や絵を頼まれて書くこと。

しもたや・・・商店ではない普通の家。

画竜点睛(がりょうてんせい)・・・最後の大切な仕上げ、ほんの少し手を加えることで全体が引き立つこと。

点景・・・風景画などで画面を引き締めるために添えられた人や物。

落籍せる(ひかせる)・・・抱え主への前借金などを払ってやって芸者や娼妓の稼業から身を引かせること。

詠嘆(えいたん)・・・物事に深く感動すること。

 

 

 

 

 

抜打ち獅子兵衛 山本周五郎 

【朗読】抜打ち獅子兵衛 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「抜打ち獅子兵衛です。この作品は、昭和15年講談雑誌に掲載されました。37歳の作品です。寛永19年の江戸、両国広小路という目立つ場所に「賭け勝負、木剣真剣望み次第、試合は一本、申し込みは金一枚、打ち勝つ者には金十枚呈上。中国浪人天下無敵 抜打ち獅子兵衛」と大書された高札が立ち、町の人々の注目を浴びます。なぜ目立つところに高札を立てたのか?最後までごゆっくりお聴きください。

抜打ち獅子兵衛 主な登場人物

舘ノ内佐内(獅子兵衛)・・・改易された主人の元家臣であり、主人の遺族を護るために「抜打ち抜打ち獅子兵衛」として賭け勝負に挑む。若く美貌で剣の腕前も非常に高い。

妙泉院・・・旧主人、柘植但馬守直知の未亡人。遺族を代表する存在であり、佐内の行動を戒める。

倫子姫・・・旧主人、柘植但馬守直知の一人娘。十七歳。純真で無垢な存在。佐内にとって最も大切な存在であり、彼女を護るために佐内は尽力している。

柘植但馬守直知・・・備中新見で二万石だったが、幕府の忌諱に触れることがあって3年前に改易された。

松平虎之助・・・出雲国広瀬三万二千石、松平壱岐守の子で21歳、御連枝の気品は争えぬ威厳を備え、鬼若殿と呼ばれている。

藤兵衛・・・松平虎之助の家臣。。虎之助の命で佐内に挑むが敗北する。

抜打ち獅子兵衛 あらすじ

江戸の両国広小路で獅子兵衛は挑戦者を次々と打ち負かしています。ある日、松平壱岐守の子である虎之助が現れ、彼の命で家来の藤兵衛が獅子兵衛に挑むも、彼にあっさりと打ち負かされてしまいます。

物語はさらに進み、獅子兵衛の名が「佐内」であり、持輪寺にて主人の後室である妙泉院さまと対面し、賭け試合の件で叱責を受けます。寺を去る佐内に主人の娘である倫子姫が彼を引き留め、彼が去ってしまうことを悲しみます。佐内は倫子姫のために真実を語ることはできないが、心の中で永遠に彼女を護り続けて行くことを誓い、再び江戸の闇の中へ消えていくのでした・・。

 

改訂御定法 山本周五郎 

【朗読】改訂御定法 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「改訂御定法」(昭和37年)です。藩の行き過ぎた御定法改新によって起こった一商人の藩士訴えが、町奉行一人の責任で裁ききれないところまで進んでしまいます。そこで、中所直衛がこの件だけについての町奉行として立ち上がり、解決していきます。幼なじみの婚約者・佳奈との場面も愛情いっぱいで読みどころです。

改訂御定法 主な登場人物

中所直衛・・・中所はこの藩の筋目の家で、彼は、二十三歳で家老になる序席の「連署」になるが、藩法改新の問題が起こり、藩史編纂頭取に左遷される。矢堂玄蕃の借財不払い訴えの解決にあたる。

河本佳奈・・・直衛の幼馴染み。良人に死なれて実家に戻り、妻に死なれた直衛と再婚の婚約をする。

河本宗兵衛・・・佳奈の兄。直衛の友人。町奉行。

矢堂玄蕃・・・ほとんど有名無実のような屋敷地割方肝煎という役についている。放埓者で高利貸しから借財不払いで町奉行に訴えられる。

要屋喜四郎・・・呉服、染物、什器の商いに両替と質屋、裏で金貸しをやっているという噂がある商人。

改訂御定法のあらすじ (※ネタバレを含みます)

御定法が改正されて以来、七年間で町奉行の交代が河本宗兵衛でもう三度めになる。訴訟が多く、町奉行が幾たびも苦境に立たされています。しかし触出された法令をたやすく変えることはできません。中所直衛が、矢堂玄蕃の借財不払いを訴えた要屋の裁きを利用して、新しい御定法にはっきりした威厳と基準を与えようと奮闘する話です。幼なじみで親戚以上のつきあいを続ける町奉行・河本宗兵衛と、その妹で婚約者・佳奈と中所直衛のやりとりがあたたかく思い遣りを感じます。

アリア
今回の植物は野木瓜(のぼけ)です!庭に亡くなった妻が植えた野生の野木瓜があり、春には朱色の見事な花を咲かせます。彼女が、実を塩漬けにすると香りのよい箸休めになると云っていたが、生きている間には一つか二つしかならなかった。そして今、数えてみると二十八個もなっていた。この実が佳奈の手によって砂糖漬けにされますが・・・
かん太
雨のシーンは初めてのお白洲の日、「朝のうち降っていた小雨は止んだけれども、空は雨雲で覆われていて、いつまた降りだすかわからないような空模様であった。」と描かれています。

 

改訂御定法の覚え書き

煩瑣(はんさ)・・・こまごまとしてわずらわしいこと。また、そのさま。

事跡(じせき)・・・物事が行われたあと。事件のあと。

稿閲(こうえつ)・・・原稿に書かれている文章の意味や内容を読み、誤りを正すこと。

時服(じふく)・・・四季の時候に合わせて着る衣服。

什器(じゅうき)・・・日常使用する器具・家具類。

偏狭(へんきょう)・・・自分だけの狭い考えにとらわれること。度量の小さいこと。そのさま。

頑強(がんきょう)・・・自分の態度や考えをかたくなに守って、外からの力に容易に屈しないさま。

後難(こうなん)・・・あとに起こる災難。後日の災い。

白洲(しらす)・・・江戸時代の奉行所で、法廷が開かれた場所。

褄先(つまさき)・・・和服の褄の先。衿下と裾の出会う角のところ。

下吟味(したぎんみ)・・・罪状を調べただすこと。

剛腹(ごうふく)・・・度量が大きく、こせこせしないこと。大胆でものおじしないこと。また、そのさま。

些末(さまつ)・・・重要でない、小さなことであるさま。

放埓(ほうらつ)・・・身持ちの悪いこと。酒色にふけること。

志操(しそう)・・・自分の主義や主張などを固く守って変えない心。

内福(ないふく)・・・見かけよりも内実が豊かなこと。内証の裕福なこと。

 

 

 

新三郎母子 山本周五郎

【朗読】新三郎母子 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「新三郎母子」(昭和8年)周五郎先生30歳の作品です。幼い頃から父御は死んだと聞かせれていた新三郎。しかし彼の父は・・・・

新三郎母子 主な登場人物

平井新三郎・・・父に会うため母親と二人、江戸から岡山へ十日ほど前に移ってきた浪人。

貞江・・・永松勘兵衛の娘。毎日、平井の家の食事の支度や、病床にある母の世話をする。

永松勘兵衛・・・五十一歳。岡山池田藩士。性剛直で交際も少なく、早く妻を失って娘貞江と二人暮らしている。

津禰(つね)・・・新三郎の母。娘時分、お城に上がって殿様の御傍仕えを勤めていた。

江神楚雲(えがみそうん)・・・母の伯父で町儒者。膝下に漢籍を教える。新三郎と母がずっと世話になっていた。

池田新太郎少将光政公・・・岡山藩主。

新三郎母子 あらすじ(※ネタバレを含みます)

新三郎は江戸で、母と伯父の楚雲の元で生まれ育った。楚雲は折あるごとに「新三、今こそ落魄して居るが、そちは由緒ある人の子なのだ。一心に修行して立派な武士にならねばならぬぞ!」と云い云いした。新三郎はこれを幼な心に深く銘して忘れなかった。彼は文武ともに進歩は速やかであった。新三郎が二十三歳になった時、余命幾許もない楚雲が、自分が死んだあと、岡山にいる父に会いに行き、父子の名乗りをするがいいと遺言した。かねて父は亡き人と聞かされていた新三郎は驚いた。

新三郎母子 覚え書き

襤褸(つづれ)・・・使い古して役に立たなくなった布。

凡下(ぼんげ)・・・平凡ですぐれたところのないこと。

機会(しお)・・・事をするのに最も都合のよい時期。

竹光(たけみつ)・・・竹を削って刀身にみせかけたもの。

怒罵(どば)・・・怒りののしること。

落魄(らくはく)・・・おちぶれること。

膝下(しっか)・・・身に近いところ。

漢籍(かんせき)・・・中国の書物。中国人によって書かれた漢文形態の書物。

稟質(ひんしつ)・・・天からうけた性質。

幾許(いくばく)・・・いくら、どれほど。

境涯(きょうがい)・・・この世に生きていく上でおかれている立場。

陋巷(ろうこう)・・・狭くむさくるしい町。

不念(ぶねん)・・・注意が足りないこと。考えが足りないこと。

狼藉者(ろうぜきもの)・・・乱暴をはたらくもの。

詮方(せんかた)・・・なすべき方法。てだて。

 

 

 

 

 

 

新女峡祝言 山本周五郎

【朗読】新女峡祝言 山本周五郎 読み手アリア

こんにちは!癒しの朗読屋アリアです。今回は、山本周五郎作「新女峡祝言(よめきょうしゅうげん)」(昭和14年)です。

 

新女峡祝言 主な登場人物

松室伊兵衛・・・郷士。私財を投げ出して新女峡(よめきょう)の治水工事を起こそうと計る。

村右衛門・清吉・・・松室家の家僕。

松室信右衛門・・・本家の当主。伊兵衛の伯父。新女峡の治水工事に反対し、伊兵衛の邪魔をする。

絹江・・・伊兵衛の従兄妹で、伊兵衛を想っている。信右衛門の娘。

乙二郎・・・十五歳。信右衛門の息子。

大村市之丞・・・美濃の国本江藩の家老の子息。色が白く眉目秀でた端麗な若侍。伊兵衛の学友。

新女峡祝言 あらすじ(※ネタバレを含みます)

奥飛騨の山々の水を集めて木曽川へ注ぐ新女峡は切立った深淵で、雪解期になると一時に水が溢れるから、三年に一度くらいずつ川下の倉江郷付近は一帯にひどい氾濫を起こしていた。高山藩では御内政の都合よろしからず、新女峡治水策には一顧も与えてくれなかった。益田郡で指折りの古い郷士の松室伊兵衛は私財を処分し、新女峡の治水工事を起こそうと計った。しかし、松室の本家の当主松室信右衛門は治水工事に反対だった。信右衛門の娘、絹江と伊兵衛は幼い頃からお互いに想い合っていた。ある時、見廻りに出ていた伊兵衛は、祖師の温泉へ保養に来た遊学した折の学友、市之丞に会う。市之丞は、伊兵衛の絹江に対する気持ちに気付きながら、彼女に求婚する。

新女峡祝言 覚え書き

雪塊(せっかい)・・・雪のかたまり。

雪煙(せつえん・ゆきけむり)・・・積もっていた雪が風のために煙のように舞い上がること。

話頭(わとう)・・・話をするきっかけ。話の糸口。

急峻(きゅうしゅん)・・・傾斜が急で険しいこと。

深淵(しんえん)・・・深い淵。

衰微(すいび)・・・勢いが衰えて弱くなること。衰退。

遊学(ゆうがく)・・・故郷を離れ、よその土地や国に行って勉学すること。

我執(がしゅう)・・・自分中心の考えにとらわれて、そこから離れられないこと。

頑強(がんきょう)・・・自分の態度や考えをかたくなに守って、外からの力に容易に屈しないさま。

踏査(とうさ)・・・実際にその地へ出かけて調べること。

憂悶(ゆうもん)・・・思い悩み、苦しむこと。

嘯いて(うそぶいて)・・・とぼけて知らないふりをする。平然と言う。

暗鬱(あんうつ)・・・気持ちが暗く、ふさぎこんでいること。

耳底(じてい)・・・耳の底。耳の奥。

叩頭(こうとう)・・・頭を地につけておじぎすること。

下賤(げせん)・・・いやしいこと。身分が低いこと。

蕭殺(しょうさつ)・・・物寂しいさま。秋の末の草木の枯れて物悲しいさま。

仰臥(ぎょうが)・・・あおむけに寝ること。

黙然(もくぜん)・・・口をつぐんでいるさま。もくねん。

自在鉤(じざいかぎ)・・・囲炉裏やかまどの上に吊り下げ、それに掛けた鍋・釜などと火との距離を自由に調節できる鉤。

足袋跣(たびはだし)・・・下駄や草履を履かないで、足袋のまま地面を歩くこと。

薪炭(しんたん)・・・たきぎと炭。

飛礫(つぶて)・・・小石を投げること。また、その小石。

水落(みずおち)・・・みぞおち。

悄然(しょうぜん)・・・元気がなく、うちしおれているさま。しょんぼり。

才知(さいち)・・・才能と知恵。

斯様(かよう)・・・このような、この通り。

頑愚(がんぐ)・・・おろかで強情なこと。

哄笑(こうしょう)・・・大口を開けて笑うこと。どっと大声で笑うこと。